2016年10月22日
日本平和学会第22期会長
君島東彦
日本平和学会第22期
第2期全国キャラバン「社会構想としての憲法」の提案
2016年7月の参議院議員選挙の結果、日本国憲法改定を志向する議員が衆参両院において3分の2を超えた。日本国憲法の下で初めて、憲法 96 条が規定する手続によって、国会が憲法改正を発議する現実的可能性が生まれた。これから衆参両院の憲法審査会を主たる舞台として、憲法改定の議論が進行することが予想される。
振り返ってみれば、戦後日本の歴史は、日本国憲法に体現される社会構想・安全保障構想とそれに対立する社会構想・安全保障構想──国家主義的権威主義的な社会構想、米国との安保体制を優位におく対外政策──との対立抗争の歴史だったといえるかもしれない。その点では、日本国憲法「改正」は戦後史を貫く一大争点であった。
日本平和学会にとっても、日本国憲法の平和主義はひとつの柱であったといえよう。日本国憲法の社会構想・安全保障構想を根本的に変えようとする動きがある現在、日本平和学会としては、日本国憲法に体現されている社会構想・安全保障構想を理論的に深めるという方法で、いまの政治の動きに応答したいと思う。
具体的には、2011-2013 年に地区研究会と連携して全国を縦断して開催された第1期全国キャラバン「平和の再定義」をモデルに、その第2期として「社会構想としての憲法」という統一テーマをかかげ、2017-2018 年の2年間の間に(22期から23期にまたがるが)、全国の7つの地区研究会と連携して、各地で順次研究会を開催して、日本国憲法に体現されている社会構想──条文として表現される社会構想──について理論的検討を行い、日本国憲法の規範を批判的に再確認するというイメージである。
たとえば、日本国憲法 24条に体現されている家族圏における男女の同権・家父長制的暴力の克服について検討する研究会、前文と 9条に示されている平和主義について検討する研究会、あるいは生存権(25条)・教育を受ける権利(26条)・労働基本権(28条)の現状について検討する研究会──これは新自由主義との関係が当然にテーマになるだろう──等々が考えられる。また、沖縄や北海道のように、日本国憲法との緊張関係を意識させられる地域もある。同時に、日本国憲法に体現されている社会構想を検討する際に、それと響き合うようなグローバルな改革潮流、批判的理論をも視野に入れて、日本国憲法を再定位したいと思う。
日本の政治日程としては、これから2年くらいをかけて、国会の内外で憲法改定の議論が進行すると予想されるが、日本平和学会は、国会の内外で進行する議論をにらみつつ、2年間をかけて第2期全国キャラバンを開催して、全国各地の平和学会会員、学生・院生・一般市民のみなさんに、憲法に関する充分な判断材料を提供することをめざしたい。