日本平和学会2019年度秋季研究集会
21世紀の「インド・太平洋」の独立と平和-ニューカレドニアの2018年の住民投票の考察から
明治学院大学
勝俣 誠
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南太平洋のニューカレドニアは1853年来フランスの植民地である。この植民地は現在国際連合憲章に基づく「植民地と人民に独立を付与する宣言」が適用される全世界の17非自治地域のリストに含まれている。そのリストの「アジア・太平洋」地域では米国領サモア、グアム、ピトケアン諸島、トケラウ、仏領ポリネシアとともにニューカレドニアは記載されている。1960年代末には本格化する先住民のカナキ民族による独立運動の高まりに対して宗主国のフランス政府は1988年、独立派と反独立派との3者の間で10年後の1998年に独立かフランスにとどまるかを問う住民投票の実施を取り決めたマティニョン合意が締結された。しかし、1998年には住民投票は行われず、同島の自治拡大(防衛、治安、司法、通貨を除く)を条件に10年後の2018年11月に第1回、さらに2020年、2022年と3回の住民投票を実施できるヌメア協定がフランス政府,独立派のFLNKSおよび独立反対派のRPCRの間で調印された。2018年11月の第1回住民投票では投票率80.63%で独立反対が56.4%、賛成が43.6%であった。
本報告は2018年住民投票結果の選挙行動分析を踏まえ以下の3つの課題をアジア・太平洋地域の平和の観点から考察する。
1. 2018年11月の住民投票は何を主たる争点としたかを明らかにして、独立の内実を考察する。
2. 世界有数のニッケル埋蔵島のたどった近現代史を「資源と暴力」の政治経済的考察から特徴付ける。
3. 21世紀に始まる「インド・太平洋」地域における大国の新たな秩序形成に対するニューカレドニアからの平和共存展望の可能性について。
主要参照資料:
- 勝俣誠、「ニューカレドニアの非植民地化と自立化の試み」、in畑博行編、『南太平洋諸国の法と社会』、有信堂高文社, 1992年
- アジア・太平洋マイクロステート研究会(佐藤幸男代表)編、「太平洋における非核と共生の条件」、広島大学平和科学研究センター、1993年、
- Hamid Mokaddem, Luc Enoka Camoul, Georges Waixen Wayewol, Makoto Katsumata, Aurore Hamene、“Nouvelle Calédonie le Oui minoritaire, Une belle promesse de liberté et de souveraineté”, Expressions ( Nouméa), la courte échelle/ transit de Marseille,Collection Kanaky-Calédonie, 2019