「日中平和学の可能性」に関する一考察 ――第1分科会「日本の歴史修正主義の問題について」をふまえて――

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「日中平和学の可能性」に関する一考察

――第1分科会「日本の歴史修正主義の問題について」をふまえて――

加治宏基(愛知大学)

 

1 3度目の日中平和学対話がめざしたもの

第2回対話後に共有された問題意識

日中両国の平和研究者は、日中独自の/東アジア発の平和学の知的共有財(日中平和学という「共通言語」)をいかに協創するのか。

→ 第3回日中平和学対話「東アジア新時代の展望――日中平和学の可能性」

 

2 第1分科会「日本の歴史修正主義の問題について」の論点

蘇智良報告「日本の歴史修正主義の問題について――“慰安婦”問題を中心として」

①日本の歴史修正主義は、保守政治家と右翼学者、ジャーナリストら知識人が育み大衆化を推進

②一時的にであれ日本の教科書記述から封殺された“慰安婦”(=性奴隷)制度の「従軍性」を史料により検証

→ 日本社会における「慰安婦」問題に関する認識後退を懸念

この議論のなかで日本のリベラル平和研究者は不在?

 

加治宏基報告「日本の修正主義と日中平和学対話――歴史認識と国際認識をめぐる修正主義を“修正”するために」

①歴史認識問題を日中/日韓などのバイラテラルな関係性に矮小化(日本と旧連合国との相反構造を捨象)

②日本政府は、安全保障関連法の必要根拠を「安全保障環境の変化」とする一方で、尖閣諸島については「領有権の問題はそもそも存在しません」との見解に拘泥

→ 日本のリベラル平和研究者たる省察を起点としたが・・・

 

3 第3回日中平和学対話でみえてきたこと――ともに“平和学する”ために

修正主義の大衆化を助長した/抑止しえなかった主体としての自省的ベクトルを醸成し、それを所与とした分析枠組の必要性

→ 例えば、自らの社会にひろがる修正主義を定位、その大衆化プロセスやダイナミズムに関する研究:日中対話の平和学プラットフォームの可能性

 

 

参考文献

 

「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律」法律第76号(通称:平和安全法制整備法)(2015年9月30日)

 

「国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律」法律第77号(通称:国際平和支援法)(2015年9月30日)

 

閣議決定(2014年7月1日)「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」

 

安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(2014年5月15日提出)「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」報告書

 

酒井直樹(2017)『ひきこもりの国民主義』岩波書店

 

清水奈名子・竹峰誠一郎・加治宏基(2017)「「戦後」再論――その多元性について」愛知大学現代中国学会編『中国21』Vol.45,東方書店

 

『毎日新聞』「学習指導要領改定案 「固有の領土」明記 小中学校、竹島と尖閣諸島」2017年2月15日

 

U.S. welcomes Japan's enactment of new security legislation, The Japan Times, Sep. 19, 2015.

 

中国外交部ウェブサイト「中国外交部発言人洪磊就日本国会表決通過新安保法案答記者問」

https://www.fmprc.gov.cn/web/wjdt_674879/fyrbt_674889/t1298011.shtml (2018年12月20日)

 

内閣官房領土・主権対策企画調整室ウェブサイト「発達段階に応じた領土に関する教育」

https://www.cas.go.jp/jp/ryodo/torikumi/mext.html (2018年12月13日)

 

日本国外務省ウェブサイト「日本の領土をめぐる情勢」「尖閣諸島」

https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/senkaku/index.html (2018月9月10日)