2018年度 春季研究大会

2018年6月23日(土)・24日(日) 会場:東京大学駒場キャンパス

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2018年度 春季研究大会プログラム(6月4日版)
(20180604版)平和学会2018春季大会部会企画.pdf
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レジュメ集正誤表(2019年2月25日掲載)

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2018年度日本平和学会春季研究集会レジュメ集正誤表(20190224).pdf
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2018年6月4日版

 

日本平和学会2018年度 春季研究大会プログラム

2018年6月23日(土)・24日(日) 会場:東京大学駒場キャンパス 

 

大会テーマ「人間と国家 ― 平和学の社会的責任と構想力」

 

<開催趣旨>

 ポスト冷戦時代に国際的な権力や国家主権の相対化が指摘されて以降、二十余年が経過した。その間の変化は、世界政治の多極化、グローバル資本主義の普遍化と格差の拡大、世界の内戦化、国際テロネットワークの増殖、地域的な国際機構の発展、グローバルな市民社会の台頭等として語られ、平和学においても多様な研究が進められてきた。世界の秩序を構想し、形成するうえで、非国家主体が重要な役割を果たしてきたことは、NGOの連合体によって主導された核兵器禁止条約の採択が端的に示していると言えよう。

 その一方で、「唯一の戦争被爆国」とされてきた日本においては、核戦力に依存した安全保障体制の維持が主張されている。この主張の根拠とされる東アジア地域の緊張関係を語る際には、また当該地域の緊張関係と密接に関わる歴史認識や戦後補償は、いずれも国家間の問題として扱われ、ナショナルな境界線が強調されてきた。さらに日本国内においても、米軍基地問題や憲法改正の加速化にみられるように、個人の権利を侵食する国家権力の肥大化が問題となり続けている。

 より非暴力的な世界秩序を構想し、形成していくという社会的責任を果たすために、現代の平和学には何ができるのだろうか。本大会では人間と国家をめぐる緊張関係に着目することで、相対化後も強い影響力をもつ主権国家を軸とした社会構造に、平和学はいかに向き合っていくのかについて議論する機会としたい。

 第22期企画委員長 清水奈名子

 

6月23日(土)

9:10-11:30  

自由論題部会1(パッケージ企画1)

「<占領のノーマライゼーション=不可視化>と闘う-パレスチナ女性の『日常生活の政治学』」(パネル・ディスカッション)

 

 本部会は、「人間と国家」という大会テーマの下、国家の暴力とそれに立ち向かう人間の姿を、イスラエルのパレスチナ占領を事例として明らかにし、日本のフェミニズム運動の連帯の可能性を議論するものである。パレスチナでは、外国占領がより恒久的な体制の確立によって見えにくくなっている一方で、国家の暴力性が巧妙な深化をとげている。本部会では、女性の日々の闘いを通じて<ノーマライズした>抑圧状況を可視化し、「見る側」の視点を回復しようと試みる。2017年米政権が行ったエルサレムの首都承認は現状を追認したものだという論理における「現状」とは、まさに不可視化を受け入れてしまう見る側の「視点」の問題にほかならないことを提起したい。

 イスラエルは1967年の第三次中東戦争の結果、東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区とガザを占領した。東エルサレムでは、入植地や隔離壁(アパルトヘイト壁)の建設による土地の収奪、建物の接収、家屋の破壊、パレスチナ人の居住資格剥奪などにより「ユダヤ化」が進められてきた。西岸地区では、隔離壁、入植地、ユダヤ人専用道路、検問所、道路ブロックにより分断され、人々は小島のようになったコミュニティの中での生を強いられている。フェンスで囲まれたガザは出入り口を封鎖され、人々はぎりぎりの生存状態におかれている。こうした<占領のノーマライゼーション=不可視化>が進む中、パレスチナ人の日常生活は細部にいたるまで強い負の影響を受け続けているが、国際社会では注目を浴びにくい。

 パレスチナ女性たちはこれらに抵抗し、日常生活の中で闘いを進めている。彼女たちの家族とコミュニティの絆を維持し、健康、教育、居住、雇用に対する権利を求める闘いは「日常生活の政治学(Politics of Everyday Life)」である。本セッションは、占領下でパレスチナ女性として生きることの意味および占領に抗する女性たちの闘いを考察することでジェンダー視点から占領とは何かを考え、問題解決のために日本を含む国際社会が取り組むべき課題を議論する。

 

パネリスト1:Fadwa Al-Labadi(アルクドゥス大学)

The Apartheid Separation/Annexation Wall and its Impact on Gender and Citizenship Rights(アパルトヘイト分離壁とそのジェンダー、市民権へのインパクト)”(報告は英語・日本語への逐次通訳有)

パネリスト2:清末愛砂(室蘭工業大学大学院)

パレスチナと日本のフェミニスト運動の連帯の可能性を考える

コメンテーター:近江美保(長崎大学)

司会:松野明久(大阪大学大学院)

 

9:10-11:30  

部会1 ワークショップ(平和教育プロジェクト委員会企画)

「トレーナーズトレーニング やり⇔とり力を育てる:『国家・祖国・ネイション』をめぐって」

 

 平和教育プロジェクト委員会23期では、“やりとりする力を鍛える”を大きなテーマとしている。相手の言葉を受け止め、返す。当たり前のように思えるが、私たちは本当に“やりとり”しているだろうか。アクティブラーニングが必要とされている教育現場や、平和活動などで仲間や意見が違う人がいる場でも、相手の発したものを受け止めきれていなかったり、自分の考える方向に恣意的に会話がずれたり、相手の発言とは関係なく自分の主張をしていないだろうか。返す力、受け止める力、まさに“やり⇔とり”をする力は、不必要なコンフリクトを起こさない平和をつくる創る基盤となり、その力は個人間のみならず、集団、国家間の“やりとり”=外交にも必要な力である。グローバル化がもたらした格差や不平等、差別や排除による分断を再び繋ぎなおす力を育て、また自らもその力を鍛え直すことが、平和教育者としての社会的責任であると考え、今期は教育者やファシリテーター、平和運動で役割を担う人を対象としたトレーナーズトレーニングの企画を行う。

 今回は、「国家・祖国・ネイション」をトピックとして、参加者のつぶやきを聴き、感情を受け取り、返す、という交換のプロセスを感じながら“やり⇔とり力”を高めるという、筋書きのない実験的な試みである。失敗を恐れない、失敗から学べるような雰囲気を作り、相手の投げたボールを受け止め、投げ返すことで創出できる人同士の平和的・創造的なネットワーキングの可能性を探りたい。

 

ファシリテーター:奥本京子(大阪女学院大学)、笠井綾(宮崎国際大学)、杉田明宏(大東文化大学)、鈴木晶(横浜サイエンスフロンティア高校)、高部優子(横浜国立大学大学院)、暉峻僚三(川崎市平和館)、中原澪佳(新潟大学大学院)、堀芳枝(獨協大学)、松井ケティ(清泉女子大学)、山根和代(立命館大学)、ロニー・アレキサンダー (神戸大学)

 

 

11:30-12:00 昼休み

 

 

12:00-14:00 分科会

 

 

14:10-15:20 総会

第6回日本平和学会平和賞・平和研究奨励賞授与式

 

 

15:30-18:00

部会2(開催校企画) 

「戦争と人間―個人の法的責任・権利・地位の地平」

 今回の開催校企画部会は、第6回平和賞に関連するものである。本部会に先行する形で、個人の法的責任・権利・地位の地平において戦争と人間とのかかわりの核心に迫る研究を行ってこられた内海愛子、大沼保昭、田中宏の三氏に対する第6回平和賞の授与式が予定されているが、その選考理由は、三氏がその研究を通じて、いかなる法的地位にある個人が、(1)侵略戦争の開戦の責任を問われるのか、(2)戦争中の俘虜虐待を含む非人道的行為の責任を問われるのか、そして(3)終戦後の戦争被害者に対する給付対象に含まれるのかなどの問いに正面から取り組み、平和/講和(peace)の持つ多面的な意味を鮮やかに照らし出したことにある。選考理由の詳細は、学会ウェッブサイト(https://www.psaj.org/学会賞/第6回-2017年/)を御覧いただきたい。

 本部会では、三氏が取り組まれたテーマをあらためて取り上げ、日本政治史、日韓関係史の研究者が、それぞれの視角から論考を展開する。

 

報告1:波多野澄雄(筑波大学)

サンフランシスコ講和体制と『和解』の構造(仮)

報告2:吉澤文寿(新潟国際情報大学)

日韓国交正常化交渉をめぐる植民地責任論の現況(仮)

報告3:高橋哲哉(東京大学)

「『戦後責任』についての基礎的考察(仮)」

討論:阿部浩己(明治学院大学)

司会:石田憲(千葉大学)

 

 

18:30-20:30

懇親会

 

 

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6月24日(日)

9:10-11:30  

自由論題部会2(単独報告)

報告1:小田博志(北海道大学)

先住民族遺骨のrepatriation(返還/帰還)と脱植民地化:東京大学・小金井良精が『収集』したアイヌ遺骨を事例に

討論者:松島泰勝(龍谷大学)

報告2:猪口絢子(大阪大学大学院博士後期課程)

国際紛争鉱物規制がもたらしたルワンダの資源ガバナンス改善

討論者:米川正子(立教大学)

報告3:木原滋哉(呉工業高等専門学校)

「国境を越えたベトナム反戦運動 ―反戦米兵の支援運動をめぐって」

討論者:福本圭介(新潟県立大学)

司会:麻生多聞(鳴門教育大学)

 

9:10-11:30

部会3 「核兵器禁止条約と市民社会の役割 ―核兵器の非人道性への着目」

(企画委員会企画部会)

 

 世界で唯一、国際法によって禁止されていなかった大量破壊兵器である核兵器を禁止する条約が、2017年に国連総会において採択された。その推進主体となったのは、NGOの連合体である「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」であり、さらに長年にわたり世界各地で被爆体験を証言し続けたヒバクシャたちであった。核兵器の非人道性を重視した議論を展開することで、核兵器廃絶の必然性を訴え、より人道的な世界を構想したこれらのアクターが、新たな国際規範形成を実現したのである。本部会では、世界秩序の構想と形成における市民社会の役割について、核兵器禁止条約を事例として検討する。

 

報告1:川崎哲(ピースボート・ICAN)

核兵器禁止条約採択における市民社会の役割 ―ICANを事例として

報告2:佐藤史郎(大阪国際大学)

『核兵器の非人道性』の意義と課題

報告3:四條知恵(日本学術振興会特別研究員・長崎大学)

長崎における原爆被害の語りに着目して ―証言と語られないもの

討論:高原孝生(明治学院大学) 

討論:湯浅正恵(広島市立大学)

司会:毛利聡子(明星大学)

 

 

11:30-12:00 昼休み

 

 

12:00-14:00 分科会

 

 

14:10-16:40

自由論題部会3(パッケージ企画2)

「脱原発の進む東アジア――台湾、ベトナム、日本の現状と将来展望――」

 2016年から2017年にかけ、台湾、ベトナム、韓国では次々に脱原発の方向性が決定された。このうち台湾、韓国では既存の原発の廃炉方針と新規建設の凍結、ベトナムでは初の原発建設計画の白紙撤回がそれぞれ公表されている。これらは3.11のあとすぐに脱原発に舵を切ったドイツやイタリアなどの西欧諸国に続き、数年遅れでやってきた東アジア地域の脱原発とも呼べよう。

 本部会では、この東アジア各国・地域の脱原発方針について、それが決定された契機や要因を明らかにするとともに、「本当に計画が再燃することはないのか」という疑問も含めたその将来展望を明らかにする。同時に、これらの諸国・地域とは逆行する形で原発再稼動による巻き返しを図る日本の問題点についても、議論を行いたい。

 原発はそもそも核兵器製造時の副産物である熱を利用して開発され、その技術を持つことは、核兵器製造のポテンシャルをもたらす。また同時に、たとえ平和のための核利用であっても、ひとたび事故が起これば核兵器に準じる大きな災禍を及ぼすことは、3.11を通して我々は経験ずみである。さらに北朝鮮のミサイル問題、南シナ海での島しょをめぐる争い等を抱える東アジア地域で、原発は軍事標的になる可能性もある。

地域の平和に密接に関係する東アジアの脱原発についての議論を通し、本部会では今後の日本を含む国々や地域での脱原発に向けた提言を行い、実際の行動にもつなげていきたい。

 

報告1:鈴木真奈美(明治大学大学院博士後期課程)

台湾の原子力政策転換とその要因

報告2:吉井美知子(沖縄大学)

ベトナムの原発建設計画はなぜ白紙撤回されたのか

報告3:藍原寛子(Japan Perspective News)

日本における脱原発運動-311前後の福島県浜通りの脱原発運動の現状と課題

討論:竹峰誠一郎(明星大学)

司会:佐伯奈津子(名古屋学院大学)

 

 

14:10-16:40

部会4「社会構想としての憲法」

 日本では憲法改正を進めようとする政治勢力が力を強めている。立憲主義という根本的な原理が揺らいでいるという見解もある。

 憲法は今、さまざまな議論のテーマ になっているが、そもそも憲法は社会の根源的な編成原理を形作っている社会契約という性格がある。ここでは憲法を考え直すことで、私たちの社会や生活がどのように構成されているのか、構成すべきなのかを、広い文脈から考察したい。退嬰的な改憲と解釈関係の議論をすっぱり拒絶し、その新たな可能性や肥沃な変容のあり方を構想したい。

 

報告1:青井未帆(学習院大学)

憲法を支えるもの、憲法が支えるもの

報告2:暉峻僚三(中央大学)

憲法理念からのネイション意識の再構築

報告3:小松寛(千葉大学)

戦後沖縄の経験から憲法を問う

討論:進藤兵(都留文科大学)

司会:堀芳枝(獨協大学)