2017年7月1日(土)・2日(日)北海道大学
大会会場で配布したファイルです。
非会員の方でも事前申し込みなく、資料代500円でご参加いただけます。(ただし部会2「アイヌ・ネノ・アン・アイヌ」および恵庭事件映画上映会のみの場合は無料です。)
まずは北大クラーク会館2階の受付にお出で下さい。
2017年6月2日版
日本平和学会2017年度 春季研究大会プログラム
2017年7月1日(土)・2日(日)開催校:北海道大学
大会テーマ「植民地主義と憲法を北海道/アイヌモシリで問い直す」
<開催趣旨>
この研究大会を「対話の場」としたい。お互いの声を聴き合い、新たな平和の言葉を紡ぎ出し、これからの社会を共に構想する場を開きたい。だからこの趣旨文もまず歴史の他者の声を聴くことから始めよう。
北海道、樺太、千島列島をアイヌモシリ(アイヌの住む大地)として、固有の言語と文化を持ち、共通の経済生活を営み、独自の歴史を築いた集団がアイヌ民族であり(中略)明治維新によって近代的統一国家への第一歩を踏み出した日本政府は、先住民であるアイヌとの間になんの交渉もなくアイヌモシリ全土を持主なき土地として一方的に領土に組み入れ、また、帝政ロシアとの間に千島・樺太交換条約を締結して樺太および北千島のアイヌの安住の地を強制的に棄てさせたのである。
これは1984年に北海道ウタリ協会(現北海道アイヌ協会)が作成した「アイヌ民族に関する法律(案)」の一節である。アイヌモシリから「北海道」が分離され、日本政府により一方的に領有された――それは植民地化に他ならない。明治2年の「開拓使設置」から、アイヌ民族に対する土地・資源の収奪、強制移住、同化政策、日常的差別が行われ、人間としての尊厳と権利が奪われ、多くの痛みが引き起こされていった。それは広く見れば日本が帝国主義コースを辿り、軍事化と侵略を進めアジア太平洋戦争をひき起こすにいたる端緒でもあった。
日本国憲法はこの歴史の流れの果てに制定された。本年は自衛隊の合憲性が論点ともなった恵庭判決50周年に当たり、また現政権による「改憲・加憲」への動きが押し進められることが予想される。ここで日本国憲法の諸原則、とりわけ平和主義をいかに守っていくかが問われる。しかし他方で日本国憲法が北海道で施行されている理由を思い起こす必要がある。それはこの土地が大日本帝国の一部として植民地化されたことの帰結だ、ということである。この植民地主義という歴史過程は忘却・否認される傾向にあった。しかし北海道だけでなく、今日の世界各地のさまざまな対立・紛争の背景として植民地主義は働き続けている。その認識なく、先住民族の権利(先住権)の回復と、ほんとうに深い平和の実現はあり得ない。
この研究大会の主要な問題はそこにある。憲法だけを論じるのでも、植民地主義だけを論じるのでもなく、両者のズレを意識しながら、統合的に捉えられる視座を構築すること。平和主義などの価値を尊重しながら、植民地主義と国民国家に対する批判的視点を失わないこと。それに基づいて平和論を広げ、深め、これからの社会を構想すること。
この研究大会の会場となる北海道大学は、札幌農学校時代に日本で最初の「植民学」講座を開設した。またかつてアイヌ民族などに対する一方的な「研究」を実施し、「標本」として集められた遺骨が負の遺産として残されている。北大から全国の大学に広まった植民学の系譜は、第二次世界大戦後、国際関係論などと改称され平和学の源流にもなった。北海道大学も平和学も脱植民地化されるべき当事者である。他者の視点にも立ちながら、自らを見つめ直すことができる力が、批判的知性である。それが問われている。
教室やホールだけが会場ではない。食を通して学ぶ懇親会、キャンパスが食材と薬草の宝庫に変わるエコツアーのエクスカ―ジョン、音楽や踊りを通した交流。「人間らしい人間」をアイヌ語で「アイヌ・ネノ・アン・アイヌ」という。さまざまな分断を超えて関係性を脱植民地化し、人間として出会い直す場を、ときに真剣にときに楽しみながら、参加者するみなさんと共に開いていきたい。
開催地区研究会理事 小田博志
7月1日(土)
9:10-11:30
自由論題部会1(単独報告1)
報告1:奥田孝晴(文教大学)
「『コメ』と『核』と『トウホク』と ―『周辺部イデオローグ』たちから見る中枢‐周辺構造研究アプローチ」
討論:佐々木寛(新潟国際情報大学)
報告2:森山拓也(同志社大学)
討論:毛利聡子(明星大学)
報告3:安積遊歩(ピアカウンセラー)
「福祉は平和の具体化 ―優生思想を超えて、いのちの平和論へ」
討論:伊藤勲(NPO法人やまぼうし/法政大学大学院)
司会:毛利聡子(明星大学)
9:10-11:30
自由論題部会2(単独報告2)
報告1:柳原伸洋(東京女子大学)
「両大戦間期ドイツの民間防空における『平和』の敗北 ―『守り』のイデオロギーとの相克」
討論:木戸衛一(大阪大学)
報告2:ジャヤセーナパスマシリ(福岡女子大学)
「スリランカの紛争及び紛争後復興をめぐる中印の外交戦略 ―地政学のリアリティ」
討論:松田哲(京都女子大学)
報告3:申鉉旿(立命館大学)
討論:稲正樹(元国際基督教大学)
司会:杉木明子(神戸学院大学)
9:10-11:30
自由論題部会3(パッケージ報告1)
「平和への権利国連宣言を活用するために」
2016年12月19日(現地時間)、国連総会で「平和への権利宣言」が採択された(賛成131ヵ国、反対34ヶ国、棄権19ヵ国)。「平和への権利宣言」採択の情報は日本ではメディアではほとんど報じられていない。ただ、「武力不行使原則」(国連憲章2条4項)にもかかわらず、武力行使が国際社会であとを絶たない中、国連憲章で正当化されない武力行使に歯止めをかける目的で採択された「平和への権利宣言」の重要性は決して低く評価されてはならない。ましてや「平和」を対象とする「日本平和学会」には、「平和への権利宣言」の意義や重要性、その限界を正確に認識し、できる限り早く社会に提示する学問的責務があると思われる。こうした視点から、「平和への権利宣言」の内容、重要性、活用のあり方などを提起しようとするのが本パッケージ提案の企画意図である。
報告1:飯島滋明(名古屋学院大学)
「平和への権利宣言は平和概念(平和の定義)にどのような意味を持つか」
報告2:阿知良洋平(室蘭工業大学)
報告3:前田朗(東京造形大学)
「脱植民地主義と平和への権利宣言の接合 ―レイシズム、ヘイト・スピーチも含めて」
司会:笹本潤(弁護士)
9:10-11:30
部会1 「東アジアの国際移動、ジェンダー、市民社会」(英語部会)
International Migration, Gender and Civil Society in East Asia
東アジアにおける国境を越えた人の移動は、植民地支配の歴史や戦争、経済的、社会的要因によって形成されてきた。人々は貧困や迫害、あるいはよりよい暮らしを求めて国境を越えるが、ジェンダー化された秩序のもとでは女性と男性では国際移動は異なった形で経験される。本パネルでは移住ケア労働者と脱北者(そのうち60~70%は女性)の就労と定住に焦点をあて、東アジアにおける移民の権利保護と社会統合を市民社会の観点から議論する。
少子高齢化に伴い、現在、台湾には20万人を越える移住ケア労働者が就労しているが、日本の技能実習生制度と類似した制度設計は問題が多く、失踪者があとを絶たない。それに対して、台湾の移住労働者支援ネットワークは政策提言を含めた多様な活動を展開してきた。一方、日本においては経済連携協定のもとでの看護師、介護福祉士の受け入れに続いて、高齢人口の増大と女性の社会進出に対応するために、技能実習生制度の介護分野への拡大や国家戦略特区における外国人家事支援人材の受け入れが進められている。日本の移住ケア労働者の受け入れが急速に拡大する中で、台湾の報告はグローバル化するケアの未来を考える上での先行事例として捉えられよう。また、脱北者に関する報告は、植民地支配からグローバリゼーションへと国際秩序が変容する中で、難民に対して門戸を閉ざし続ける日本にとって、難民・移民の定住と社会統合についての課題を浮き彫りにするものである。本パネルはいかにして市民社会が難民・移民の権利保護と社会統合を促進させることが出来るのかについて、研究と実践を切り結ぶ形で、より良い支援体制構築に向けた議論を行うことを目的とする。
Migration in East Asia has been shaped by the colonial history, war, and various economic and social factors. People cross borders to flee from poverty, persecution, and seeking for better life but migration has been experienced differently by women and men. The panel focus on migrant care workers and refugees from North Korea, among which 60~70% are women, and discuss the rights and social integration from the civil society’s point of view.
Responding to the demographic pressure and social change, Taiwan has been accepting more than 200,000 migrant care workers from Southeast Asia. However, migration regime in Taiwan resembles Japan’s infamous Technical Intern Training Program (TITP) resulting in abuse and disappearance of workers, and the civil society has been struggling hard to advocate the rights of migrants proposing policy reforms. Japan has being accepting nurses and care workers under the Economic Partnership Agreements (EPAs) but under the increasing demographic pressure, the state decided to include care work (kaigo) into the TITP. Also, foreign domestic workers are introduced in Kanagawa, Osaka and Tokyo in order to facilitate women’s entry into the labour market. Taiwan’s case serves as a precedent for Japan to learn from their experiences anticipating the possible future of globalization of care work. The issue of the North Korean refugees will question Japan’s exclusive policy towards refugees and discuss the challenges that the refugees face in settlement and integration. The panel is composed of researchers and activists and aim to contribute to the production of knowledge in how the civil society can be strengthened in assuring the human rights and integration of migrants and refugees in East Asia.
報告1:呉静如 (台湾国際労工協会 アジア平和基金招聘ゲスト)
Jing Ru Wu(Taiwan International Workers Association: TIWA)
「ケアの正義」
報告2:藤本伸樹(アジア・太平洋人権情報センター(ヒューライツ大阪)
Nobuki Fujimoto (Hurights Osaka)
「日本への外国人介護・家事労働者の受け入れを人権の観点から検証する」
“Examining the Acceptance of Foreign Care and Domestic Workers from the Human Rights Perspectives”
報告3:金敬黙(早稲田大学)
Kim Kyungmook (Waseda University)
「北でもなく南でもなく ―脱北者は故郷を離れてどのように生きのびるのか?」
“Neither the North, Nor the South-How the North Korean exiles survive after leaving their home(s) ?”
討論:池炫周直美(北海道大学)Chi Hyunjoo Naomi (Hokkaido University)
司会:小川玲子(千葉大学)Reiko Ogawa (Chiba University)
11:30-12:00 昼休み
12:00-14:00 分科会
12:00-14:00 第2回日中平和学対話 in 南京の報告会(国際交流委員会・参加者一同主催)
日本平和学会と中国の平和研究者の第一回交流事業は2015年10月、中国チャハル学会との共催によるシンポジウム「中日関係の過去・現在・未来」として北京で実施された。日本側参加者は4名であった。
続いて第二回交流事業は、日本側10名の参加を得て、2017年2月、南京大虐殺史及び国際平和研究院、チャハル学会、南京大学平和学研究所との共催で「アジア平和の新たなビジョン」学術シンポジウムとして南京で実施した。平和学を通じた日中研究者交流・対話を発展させるため、南京での交流事業の成果及び課題を会員と共有すべく報告会を開催する。
報告者:加治宏基(愛知大学)「日中平和学対話の成果、これからの課題」
司会:佐々木寛(新潟国際情報大学)
14:10-15:00 総会
15:10-18:10
部会2(開催地区研究会企画)
「アイヌ・ネノ・アン・アイヌ:アイヌ民族の声を聴き、対話の場をひらく」
アイヌとは〈人間〉という意味です。アイヌモシリとは〈人間が住む土地〉です。
しかし日本がこの土地を植民地支配するようになると、先住民族であるアイヌを対等な〈人間〉扱いせず、一方的に土地や権利や文化を奪い、差別し、研究の対象としてきました。
アイヌ肖像権裁判の最終陳述をチカップ美恵子さんはこう締めくくりました。
もし、多くの日本人が私たちアイヌを対等な人として捉えることができたのなら、そのとき、日本人はアイヌ・ネノ・アン・アイヌ(人間らしい人間)になれるであろう。そしてそのときはアイヌが解放されるときであるとともに日本人が解放されるときであろう。
アイヌ民族を〈人間〉扱いしないことで、日本人(和人・シャモ)の側も〈人間〉らしさを失ってきた。〈人間〉らしさの回復はお互いに関わる――それを「アイヌ・ネノ・アン・アイヌ(人間らしい人間)」という美しいアイヌ語で表現しています。この部会はこの思いを受け継いで、北海道/アイヌモシリで生きる私たちが、それぞれの経験と思いを言葉にして、対話する場、〈人間〉として出会い直す場をひらくために企画したものです。
まず顔と名前のある具体的な〈人間〉であるアイヌの方々の声を聴くことから始めましょう。アイヌは植民地主義的収奪と同化政策の「被害者」です。しかしそれに抗して、生きる「主体」、社会を変える「主権者」として発言と行動をしてきました。またアイヌの痛みをつくりだしてきたのは「日本人」の側であり、自分たちこそ問われている当事者であることを忘れてはなりません。私たちを巻き込んでいる植民地支配の構造を意識し言葉にすることが、支配を引きはがして、分断と差別の関係性を超える第一歩となるでしょう。自己決定権と先住権の実現、先住権と憲法との関係、いのちある自然の回復などの論点も踏まえます。沈黙を破り、〈人間〉が〈人間〉として尊重される社会を共に構想しましょう。
報告1:差間正樹(浦幌アイヌ協会)
「地域から進める先住権の回復」
報告2:原田公久枝(フンペシスターズ)
報告3:鵜澤加那子(ノルウェー北極大学)
報告4:井上勝生(北海道大学)
討論1:石原真衣(北海道大学)
討論2:清末愛砂(室蘭工業大学)
司会:小田博志(北海道大学)
15:10-18:10
部会3 ワークショップ (平和教育プロジェクト委員会企画)
「ロールプレイを通じて考える、植民地・先住民・同化、そして平和への権利」
ファシリテーター: ロニー・アレキサンダー(神戸大学)、奥本京子(大阪女学院大学)、杉田明宏(大東文化大学)、鈴木晶(横浜サイエンスフロンティア高校)、高部優子(Be-Production)、暉峻僚三(川崎市平和館)、松井ケティ(清泉女子大学)、山根和代(平和のための博物館国際ネットワーク)
平和教育プロジェクト委員会では、2016年秋季集会において、日本社会のレイシズムをテーマとしたワークショップを実施した。集会後の振り返りでは、日本社会におけるレイシズムの問題は、植民地支配の問題と不可分であることから、植民地や同化といった切り口の必要性がメンバーより提起された。そこで、2017年春季大会においては、提起された課題と、開催地が北海道という植民地支配の背景を持つことを踏まえて、「植民地、先住民、同化と排除」をテーマにしたワークショップを提供する。
北海道という開催地の持つ背景は重要ではあるが、北海道や沖縄といった具体的かつ実在する事例を使うと、参加者のその事例に対する知識や思い入れによって、温度差(参加度)にかなりの差が出てしまうことが予想される。そこで春季大会では、先住民、植民・征服者などの立場を入れた架空のストーリーを元にした、ワークショップを実施する。 ワークショップの参加者は、ストーリーを元に立場ごとに「自分たちの不安・不満・恐れ」「自分たちの要求」をサークルプロセスの中で表現し、参加者同士で対話することで、植民地支配の中で生じる様々な暴力や対立を感じ、構造的な暴力を克服した共生のための知恵を探る。
今回のワークショップは同日パッケージ企画で開催される「平和への権利」のシンポジウムとも連動している。サークルプロセスの後には、2016年に国連において採択された「平和への権利」の宣言の元になったサンティアゴ宣言から、先住民や植民地支配に関連する部分を紹介し、サークルプロセスにおいて出された要求を実現できる条約文を参加者が作成する。
架空の寸劇と条文づくりを通じて、自分の社会の中に実際にある支配や同化を考え、語り交わす機会としたい。
15:10-18:10
部会4 (都合により本企画はキャンセルとなりました)
18:30-21:30
懇親会「イペミンタラ・食べる広場~食べることは平和すること」
特別な懇親会をご用意しました。北海道/アイヌモシリの恵みを味わっていただきます。自分たちで採集してきた山菜を使ったアイヌ料理。この土地の自然栽培野菜やエゾシカ。「外来種」と環境の問題を学べる料理もお出しする予定です。『バナナと日本人』『エビと日本人』を紐解くまでもなく、食と平和とは密接に結びついています。地産地消、手づくり、フェア、安心な食材をコンセプトにした、ここでしか味わえない料理と、アイヌ民族の皆さんの歌と演奏、踊りも一緒に体験できます。五感を通してこの「イペミンタラ・食べる広場」で平和といのちの大切さを学び、実践しましょう。会員限定、要予約とさせていただきます。
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7月2日(日)
9:10-11:30
自由論題部会4(単独報告3)
報告1:Paul Duffill (Toyo University)
討論:松野明久 Akihisa Matsuno(大阪大学 Osaka University )
報告2:Joshua Michael Campbell (International Christian University)
“Volunteering for Peace: Interstate Peacebuilding through International Volunteering.”(英語部会)
討論:松井ケティ Kathy Matsui(清泉女子大学 Seisen University)
報告3:新津厚子(東京大学大学院)
「分断を接合する技術 ―チカーナ/チカーノの諸表現における二重性・混沌性・緩慢性の考察」
討論:内田みどり(和歌山大学)
司会:松野明久(大阪大学)
9 :10-11:30
自由論題部会5(パッケージ報告2)
「アイヌと琉球民族にとっての植民地主義と憲法 ―脱植民地化のための平和学/平和学の脱植民地化に向けて―」
本大会は2012年の平和学会全国キャラバン「脱植民地化のための平和学とは?」の流れを踏まえて、北海道/アイヌモシリ(注: アイヌモシリはアイヌの伝統的領域を指し、「北海道」だけでなく「樺太(サハリン)」「千島(クリル)列島」も含むが、学会が開開催されるのが「北海道」であることと記載の便宜を踏まえ、「北海道/アイヌモシリ」と記す)の地で大日本帝国から日本国にいたる現在においても継続している植民地主義を正面から批判的に問い、「憲法の他者」たるアイヌと琉球民族の権利を見据えた社会構想を議論することを企図している。本部会は、このテーマに沿い、これまでの平和研究が内在する二つの植民地-北海道/アイヌモシリと沖縄/琉球-に対する植民地主義の影響を十分に認識し得ていなかったのではないかとの問題意識の下、脱植民地化に寄与する平和学のあり方を提起する。また、植民地主義が平和学そのものにどのように作用し影響しているかを探る営みの一歩とすることを目的とする。
報告1:高良沙哉(沖縄大学)
報告2:上村英明(恵泉女学園大学)
「先住民族:脱植民地化の平和学と憲法 ―「近代国民国家」の再検証と平和学」
討論1:前田朗(東京造形大学)
討論2:清末愛砂(室蘭工業大学)
司会:藤岡美恵子(法政大学)
9:10-11:30
部会5「平和研究としてのグローバル正義論」
人権問題、移民・難民問題、南北問題、環境問題、植民地問題など、現代世界を取り巻く様々な諸問題に対して、規範的観点から取り組む研究分野が「グローバル正義論」である。国内のいわゆる正義論研究と連動して、倫理学・政治哲学方面でとりわけ今世紀以降研究が急速に進んでいる。本部会のねらいは、このように展開するグローバル正義論の研究動向を、平和研究の立場から検討・評価することである。具体的には、「グローバル正義論は平和研究にどのように資することができるか」「春季大会の全体テーマに関連する植民地主義の是非をどのように規範的・哲学的に分析できるか」といった点について、登壇者・参加者ともに問題意識を共有し、議論を深める場としていきたい。
報告1:山田祥子(名古屋大学大学院)
「平和研究とグローバル正義論の交錯点 ―構造的暴力と主体をめぐる問題を中心に」
報告2:上原賢司(横浜国立大学)
「植民地主義はどのような意味で不正義なのか? ―植民地とグローバルな不正義」
討論1:押村高(青山学院大学)
討論2:伊藤恭彦(名古屋市立大学)
司会:松元雅和(関西大学)
11:30-12:00 昼休み
12:00-14:00 分科会
12:00-14:00 映画「憲法を武器として ―恵庭事件 知られざる50年目の真実」(稲塚秀孝監督)の上映会
北海道恵庭・・・55年前に自衛隊演習地内の通信線を切断した兄弟は、自衛隊法121条「防衛の用に供する物を損壊した」罪で起訴され、この事件は自衛隊が合憲か違憲かが争われた歴史的裁判となった。憲法判断が回避された判決から50年、この映画で知られざる真実が明らかになる。映画上映後、稲塚秀孝監督と野崎健美氏(恵庭事件当事者)の挨拶を予定。
司会:前田輪音(北海道教育大学)
14:10-16:40
部会6「ポストコロニアル状況と日本国憲法━未完の脱植民地化」
(「憲法と平和」分科会・開催校共催企画)
日本国憲法は「ポストウォー(戦後)」の憲法であると同時に「ポストコロニアル(植民地以後)」の憲法である。日本国憲法のポストウォーの憲法としての性格が強く自覚されてきたのと対照的に、日本国憲法のポストコロニアル性はあまり意識されてこなかった。敗戦後日本は、パックス・アメリカーナにおいて、米国の世界支配の「下請けの帝国」となり、旧植民地(朝鮮半島等)への優越感・差別意識を保持し続けて、帝国意識を残存させてきた。パックス・アメリカーナの終焉を迎えているいま、残存する帝国意識と東アジアのパワーシフトの現実とのズレは顕著になっており、この帝国意識は「ひきこもり」と「排外主義」に向かっている。またこの帝国意識は、現在の日本の安全保障認識━たとえば北朝鮮・中国脅威論━に影響を与えている。この部会は、このようなポストコロニアル状況において、我々は脱植民地化の課題にどのように取り組むべきか、それとのかかわりで、我々は日本国憲法をどのように見るべきか、考察する。
報告1:笹川紀勝(国際基督教大学・明治大学)
報告2:稲正樹(元国際基督教大学)
報告3:宋連玉(青山学院大学)
「『国民主権』が隠す植民地主義―在日朝鮮人が見る日本国憲法」
討論1:佐藤幸男(帝京大学)
討論2:君島東彦(立命館大学)
司会:前田輪音(北海道教育大学)
14:10-16:40
部会7「軍学共同と大学のあり方」(開催校企画)
防衛装備庁の安全保障技術研究推進制度による研究費は、2015年度に3億円の予算で始まったが、2017年度には110億円へと拡大されようとしている。国立大学法人運営費交付金の減額とは対照的である。その中で2016年度には本研究大会の開催校である北海道大学の研究者による同制度への応募が採択された。「軍学共同」の事態はすでにわれわれの身近な問題となっており、当事者としての議論と行動が求められる。軍学共同と軍事産業との関連も見逃すことはできない。2014年度には武器輸出三原則が第二次安倍政権によって撤廃され、日本企業が世界的な武器見本市に参加するようになった。学生たちは就職した企業で、武器や軍事技術を開発する仕事に携わる可能性が高まっている。この部会では、現代の大学研究者として「軍学共同」の問題に当事者性をもって向き合い、現状を共有する。それと共に議論の前提として、この問題の歴史的・政治経済的な背景や「デュアルユース」などの基本的概念の分析を加える。そこから学生への教育のあり方、軍事にとらわれない「平和」と「安全保障」の研究の可能性などまで、多面的な議論の場を開きたい。
報告1:山形定(北海道大学)
報告2:松本ますみ(室蘭工業大学)
「理系大学における『大学改革』といわゆる『軍事研究』 ―北海道の地域貢献型大学から考える」
報告3:杉山滋郎(元北海道大学)
「日本学術会議の『2017年声明』を考える―歴史的視点から」
討論1:池炫周直美(北海道大学)
討論2:鈴木一人(北海道大学)
司会:荒木肇(北海道大学)
14:10-17:00
エクスカージョン「アイヌ民族と歩く北大キャンパスツアー」
(共催:日本平和学会北海道地区研究会+ウエトゥレンテ)
北海道大学のキャンパスは、アイヌ民族の歴史・文化が刻まれた場所でもあります。このツアーではアイヌ民族の楢木貴美子さんと、川上裕子さんのご案内でかつてのサクシュコトニコタンとその周辺を歩きます。大学のキャンパスが食材と薬草の宝庫に変わります!会員限定、定員20名、要予約とさせていただきます。
以上