日本平和学会2017年度春季研究大会 報告レジュメ
「平和への権利宣言」は平和概念(平和の定義)にどのような意味を持つか
飯島滋明(名古屋学院大学)
キーワード:「平和への権利」「市民社会」UNESCO
【1】 はじめに
「国際法は絶えざる更新、変化、発展における過程であり、制度である」。
「平和への権利宣言」もさまざまな国家や「市民社会」間の相互作用の中で形成されてきた。いまも「生成中の権利」。「平和への権利」の概念把握に際しては、こうした国際社会の流れ、「市民社会」が何を主張してきたのかを把握することが必要。
【2】「平和への権利宣言」の淵源
(1)はじめに
Andrea Cofeliceは「平和への権利」の淵源として「ケロッグ=ブリアン協定」(いわゆるパリ不戦条約)を挙げる。Carlos Villán Duránは「平和への人権は国連憲章や世界人権宣言に見いだされることは疑いがない」と指摘する。「平和への権利」は世界人権宣言28条の規定に暗黙の裡に存在するとの法的な研究もある。「平和への権利宣言」の淵源として重要なものとしては以下のものがある。
(2)「平和に生きる社会の準備に関する宣言」(1978年12月国連総会採択)
「各国民と各人は、人種、思想、言語、性による別なく、平和に生きる固有の権利(inherent right to live in peace)を有する」
(3)「人民の平和への権利についての宣言」(1984年11月国連総会採択)
「平和への権利は新しい考え方ではない。実際、1984年11月に、国連総会は「人民の平和への権利についての宣言」を採択した」。
「地球上の人民は、平和への神聖な権利 を有することを厳粛に宣言する」(Solemnly proclaims that the peoples of our planet have a sacred right to peace)
「この宣言の重要性と妥当性は1985年、1986年、1988年、1990年、そして2002年と、繰り返し確認されてきた」。
「1985年の宣言は前文で、平和はあらゆる人間の譲渡できない権利であると宣言している。平和を人民だけではなく、個人の権利として扱う唯一の国連総会の文書である」。
(4)UNESCO
「この長年にわたる人類の強い願望は、1997年にユネスコで実施された最初の貴重な試みの後、国連総会の枠組みの中でようやく実現された」
1990年代、フェデリコ・マヨール事務局長によるとりくみ。
1997年 「平和への人権に関する宣言」の準備。平和に生きる権利は、既に承認されている人権のリストに加えられるべき」とされた。
1999年「平和の文化に関する行動宣言」
【3】「平和への権利宣言」(2016年12月)に対する評価
(1)スペイン国際人権法協会
「この宣言は平和への人権もその本質的要素も認めていない」
(2)パパジョヴァンニ23
「この宣言により、平和は普遍的かつ譲渡できない人権となった」
ただ、どちらのNGOもこの宣言については「it is not the end. We cannot stop here」(パパジョヴァンニ23)と考えている。
「この宣言は、市民社会や大学が演じた重要な役割の明確な結果である」
「国連憲章」「世界人権宣言」などでも市民社会は大きな役割を果たした。「平和への権利宣言」の国連総会採択に至るまで、市民社会は大きな役割を演じた。
【参考文献】脚注で挙げたもののほか、以下の文献を参照。
- 平和への権利国際キャンペーン・日本実行委員会編『いまこそ知りたい 平和への権利48のQ&A』(合同出版、2014年)
- 飯島滋明「「平和への権利宣言」(Declaration on the Right to Peace)国連総会採択について」日本国際法律家協会『INTERJURISUT No.191』(2017年)
- 飯島滋明「「平和への権利」国連総会宣言と「市民」」『月刊社会民主2017年5月号』