2016年6月25日(土)26日(日)東京女子大学
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2016年6月20日現在
日本平和学会2016年度春季研究大会プログラム
2016年6月25日(土)26日(日)
開催校:東京女子大学 開催校理事:古沢希代子
大会テーマ「日本の軍事化の新段階と平和研究の課題──暴力の諸相と対抗思想」
2016年3月29日に施行された安全保障関連法が端的に示すように、近年の日本の諸政策は、敗戦後70年間、日本国憲法の平和主義原理を基礎として形成されてきた平和政策を根本的に転換して、日本の軍事的抑制を解き放とうとするものである。これは、世界経済・世界政治の変動によってもたらされる諸暴力──テロリズム等──を軍事力によって抑え込もうとする潮流──「対テロ戦争」、PKOの軍事化等──に積極的に関与することを意味する(安倍政権の「積極的平和主義」)。われわれ平和研究者はこのような方向性を批判せざるをえない。本研究大会においては、いまの世界の諸暴力の構造を分析したうえで、軍事力依存に対抗して可能なかぎり平和的手段によってそれらの暴力を克服することをめざしている理論的・実践的営為に光をあてたい。また開催校・東京女子大学ゆかりの思想家・丸山眞男から、われわれ平和研究者への示唆を読み取りたい。
第21期企画委員長・第22期会長 君島東彦
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6月25日(土)
自由論題部会
9:30-11:30 <パッケージ企画>
「体制移行期の『平和』──過去の人権侵害への対処と課題」
権威主義体制から民主体制へ、紛争から紛争後の社会へ移行しようとする国々において、旧体制下で生じた人権侵害の責任追及は、新体制の安定という「平和」を脅かしかねない問題として捉えられてきた。これに対して近年、国連を中心とする国際社会が自由民主主義的価値に基づいて体制移行期の国々に介入するなかで、過去の人権問題への対処(移行期正義)は国家建設の重要課題として位置づけられるようになってきている。
このアプローチは、平和と正義の緊張関係を克服しうるのか。体制移行期にある政府や社会が人権問題に対処するうえで直面する課題は何か。本部会では、世界的に増えている加害者訴追の動きを分析するとともに、移行期にある政府が企業の責任問題にいかに対処してきたかを考察することで、体制移行期の「平和」の意味を再検討する手がかりとしたい。
報告:下谷内奈緒(日本学術振興会特別研究員)
報告:古内洋平(フェリス女学院大学)
「移行期正義と企業の責任――南アフリカにおける経済成長と賠償」
討論:大串和雄(東京大学)
司会:吉川元(広島市立大学広島平和研究所)
10:30-11:30 <単独報告>
報告:山本剛(早稲田大学大学院)
「難民支援に関する一考察──トルコにおけるシリア難民支援を事例として」
司会・討論:長有紀枝(立教大学)
9:30-11:30
ラウンドテーブル「チェルノブイリ30年、福島5年──原発事故の『その後』を見つめる」
(「3・11」プロジェクト委員会企画)
チェルノブイリ原発事故から30年、福島原発事故から5年が経過した現在、わたしたちは原発事故の「その後」をどう見つめていけばいいのだろうか。チェ ルノブイリをはじめ原発報道に熱心に取り組んでこられた七沢潔氏、チェルノブイリ事故の後、ベラルーシの子どもたちへの支援を続けてこられた医師の振津かつみ氏、福島第一原発事故のその後を見つめて南相馬を拠点に取材を続ける本田雅和氏の3名の方々を迎え、ラウンドテーブル形式で討議する。現場に根差した問題提起を受け、日本平和学会として、これから「3・11」とどう向き合っていくのか、議論を深める場としたい。
パネリスト:
(NHK放送文化研究所、ETV特集「ネットワークで作る放射能汚染地図」ディレクター)
振津かつみ(兵庫医科大学、「チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西」事務局)
本田雅和(朝日新聞南相馬支局長)
司会:竹峰誠一郎(明星大学)
11:30-12:00 昼休み
12:00-14:00 分科会
14:10-15:20 総会
第5回日本平和学会平和研究奨励賞の授賞式
奨励賞受賞記念スピーチ(松元雅和会員)
15:30-18:00
部会1「パレスチナ占領とイスラエルの病理──シオニズム、占領経済、軍事化する日本の関わり」(開催校企画)
本部会は、パレスチナ占領を続け、かたくなに和平を拒否しているイスラエル側の病理を解き明かすことを通じて、紛争解決のために世界と日本はイスラエルにどう関わっていくべきなのかを探求することを目的とする。具体的には、1) イスラエルの内側からシオニズムの虚偽や矛盾を批判したポスト・シオニズムの終焉とイスラエル社会の右傾化、2) 占領経済の進展とイスラエル経済内部の矛盾の2点を軸に、イスラエルの国家と社会の病みの構造を明らかにする。そして日本とシオニズムの深まる関係(とくに防衛装備移転三原則への移行と経済協力の推進)に光をあて、病めるイスラエルと日本の関与を確認し、こうした構造への市民的挑戦としてのBDS(ボイコット、資本引き揚げ、制裁)運動の意義を議論する。
趣旨説明および司会:清末愛砂(室蘭工業大学)
報告:臼杵陽(日本女子大学)
「イスラエルの直面するディレンマ──占領と民主主義は両立するのか?」
報告:シール・ヘヴェル(Shir Hever)
(Free University of Berlin/Alternative Information Center)
通訳:今野泰三(大阪市立大学)
“49 years of military occupation in Palestine: which economic interests drive the occupation?”(「パレスチナ軍事占領49年──占領が生む経済的利益とは」)
報告:役重善洋(大阪市立大学/パレスチナの平和を考える会)
討論:松野明久(大阪大学)
討論:古沢希代子(東京女子大学)
15:30-18:00
ワークショップ「Active Citizen養成講座──対話を通じて住みたい社会をつくる」(平和教育プロジェクト・平和教育分科会共催企画)
2016年6月19日に施行される公職選挙法改正によって、選挙権の年齢が「18歳以上」に引き下げられる。これをうけて、市民1人ひとりがactive citizenになるためのワークショップを開催する。1) 自分の住みたい社会を考える、2) 社会に向かって発信する、3) 他者と対話して合意を形成する、これら3つを体験するワークショップを通じて、実際に自分たちの住みたい社会を描き出すことができる平和教育素材を提供することを目的とする。
ファシリテーター:
ロニー・アレキサンダー、杉田明宏、鈴木晶、高部優子、暉峻僚三、堀芳枝、松井ケティ、山根和代
18:30-20:30 懇親会
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6月26日(日)
9:10-11:40
部会2「国連平和活動における暴力とその克服──国連報告書が示す課題と自衛隊」
「安保法制」必要論の根拠として、自衛隊による国連平和維持活動(PKO)へのさらなる貢献の必要性が指摘されてきた。すなわち、自衛隊の任務に駆け付け警護を追加し、同時に武器使用権限を拡大することが、他国軍部隊や現地で活動する人道NGO要員の保護のために不可欠であると説明されただけでなく、南スーダンPKOに派遣された自衛隊が、その任務を実施する可能性が現実化している。他方で国連においては、PKOの軍事化がはらむ問題点や、隊員による性的搾取・虐待問題が議論されてきた。本部会では、国連平和活動の暴力性がもたらす問題に焦点を当てることで、自衛隊によるさらなる「貢献」が果たして平和の実現につながるのかについて検討する。
報告:井上実佳(広島修道大学)
「国連平和活動と武力行使──ハイレベル独立パネル報告書(2015)をもとに」
報告:和田賢治(武蔵野学院大学)
報告:半田滋(東京新聞)
「自衛隊による駆け付け警護任務追加と武器使用権限拡大をめぐる課題」
討論:常岡(乗本)せつ子(フェリス女学院大学)
司会:清水奈名子(宇都宮大学)
9:10-11:40
部会3「『拡散する戦争』と『対テロ戦争』への対抗構想──真の『テロとのたたかい』とは」
2015年11月のパリ同時テロ事件により、「イスラーム国(IS)」の脅威は世界中に偏在し、いつでも、どこでも、誰でも巻き込まれることを思い知らされた。一方、シリア内戦では死者が25万人を越え、空爆でさらに増え続けているという問題は、情報と命の重みの非対称性を示している。とりわけ、11.13は、先進国で育った自国民(多くが移民の二世)が「ジハード」に感化され(あるいは訓練を受け)、先進国内でテロの担い手になるという新しい次元に入ったことを示した。他方で、先進国による報復としての「対テロ戦争」は、こうしたテロによる直接的な犠牲者よりもはるかに多くの犠牲者を生み出している(とくに多くの一般市民を巻き込む誤爆)。犠牲となった市民から見れば、過激派集団によるテロも国家による無差別な空爆もどちらも「テロ」に他ならない。数十万もの人々が母国での暴力から逃れ、難民となって欧州を目指しているが、その難民に対する排外主義が高まりを見せている。
このような状況に鑑みて、本部会では、主に3つの問題──1)先進国で高まる難民・移民に対する排外主義、2)「テロ対策」という名の下に行われる市民的自由の制限、3)テロを犯罪行為ではなく「戦争」ととらえる勢力──について検討し、市民(民衆)の側からの対抗構想(イスラームとの対話、寛容)と対抗運動(連帯・結束)の可能性を議論したい。
報告:中野裕二(駒沢大学)
報告:酒井啓子(千葉大学)
「対『イスラーム国』戦闘を巡る『誰が愛国者か』の議論──イラクにおける宗派対立」
報告:高橋源一郎(明治学院大学)
「ヴォルテールとカント、『寛容』と『永遠平和』の間で」
討論:杉木明子(神戸学院大学)
司会:毛利聡子(明星大学)
11:40-12:00 昼休み
東京女子大学丸山文庫のスタッフによる「バーチャル書庫」と「草稿類デジタルアーカイブ」のご紹介
場所:24号館1階(受付右手のコーナー)
※東京女子大学・丸山眞男記念比較思想研究センターは本日の特別講演の後援を行っています。
12:00-14:00 分科会
14:10-15:20
特別講演「丸山眞男と日本の平和研究──虚妄に賭ける理知」
講師:最上敏樹(早稲田大学、日本平和学会第14期会長)
後援:東京女子大学・丸山眞男記念比較思想研究センター
15:30-18:00
部会4「憲法平和主義の再創造──東アジア平和秩序への道筋」
第2次安倍政権の諸政策は日本の軍事化を新段階に進めている。特定秘密保護法制定、国家安全保障戦略策定、防衛装備移転三原則策定、開発協力大綱決定、日米防衛協力ガイドライン再改定、そして新安保法制定である。
もともと日本国憲法前文+9条を中心とする立憲平和主義と日米安保体制(米軍と自衛隊の防衛協力)は矛盾する側面が強く、その矛盾は2015年安保法によって、極限のところまで来ている。事ここに至って、復古的9条改正論や「普通の国」をめざす9条改正論に加えて、新安保法のような「解釈改憲」を許さないためには自衛隊を憲法の明文で位置づけてコントロールする方がよいと主張する「平和のための新9条論」という9条改正論もあらわれている。
安倍政権の軍事化政策の背後には、「安全保障環境の変化」がある。すなわち、中国が台頭するいまの国際秩序において、衰退する米国の覇権を日本が補完すべく、日本の軍事的役割分担の比率を高めるということである。2015年の安保法に関する国会審議および論壇においては、安保法違憲論に立つ場合の日本の安全保障政策、日本国憲法の平和主義に適合的な国際秩序・東アジア秩序をどのように追求するのかに関する議論が不十分であった。
本部会では、1)安保法成立後の憲法平和主義はどのような状態にあるのか、安保法廃止論、安保法違憲訴訟、新9条論等にも触れつつ、分析し、2)韓国の憲法学者の立場から、東アジアにおける日本国憲法の平和主義の意義について考察し、3)日本国憲法の平和主義をどのように再創造して、そこからどのように東アジア平和秩序を追求するのか、検討する。これらの報告をうけて、憲法平和主義の再創造と東アジアの平和への道筋について熟議したい。
報告:浦田一郎(明治大学)
報告:李 京柱(イ・キョンジュ、韓国・仁荷大学)
報告:梅林宏道(ピースデポ)
討論:青井未帆(学習院大学)
司会:君島東彦(立命館大学)