パナマ文書からみえるタックスヘイブン

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日本平和学会2016年度秋季研究集会

報告レジュメ

 

パナマ文書からみえるタックスヘイブン

 

青山学院大学

法学部教授・学長

三木 義一

 

キーワード:税制、国境、課税権

 

1.はじめに

 本報告では、パナマ文書から浮かび上がってくるタックスヘイブンの問題点等を、社会の平和と安定という視覚から報告してみたい。戦争と税・財政問題は密接に連動している。血税・兵役、皇国租税思想、国債不発行原則、相続税非課税規定等々。

 

 

2.パナマ文書と政治家・国家

 パナマ文書に登場した政治家の数が多く、このことがどう文書の注目度を高めた。主要国の政治家がタックスヘイブンを利用している背景を考えてみたい。また、日本の政治家やアメリカの政治家が登場していないが、その理由も併せて考えてみたい。

 主要政治家がタックスヘイブンを利用している国は、民主主義的な国家かという問題がある。法制度が安定せず、政権交代が同時に財産喪失のリスクがある国かもしれない。

 今回のリストには日本の政治家が見えない。パナマだから見えないだけで、ケイマンが出たら発見されることになるのか、それとも日本に特殊なより安全な制度があるのか、を考えておく必要がある。

 アメリカも同様である。アメリカ国内に巨大なタックスヘイブンがあるのではないか。

 

3.租税回避・脱税の実態がみえるか?

 今回のパナマ文書から、タックスヘイブンは犯罪組織のマネロンに利用されていること、日本の犯罪者の利用の一端などが確認されたが、氷山の一角に過ぎない

 

4.誰が公正に取り締まれるのか

  パナマ文書の公表をうけて、OECDはBEPS対策税制の強化、特に自動情報交換制度の充実をはかっているが、果たして効果的なのだろうか。まず、規制する主要国自体が本当に遵守していくのかが問われる。されに、守らない国々に対する有効な規制措置があるかも疑問。さらに各種情報の処理能力の国々の差。際限のないイタチゴッコを繰り返すのかもしれない。

 取り締まりよりも軽微な課税の累積に方向を変えるべき。

 

おわりに

 税の役割が1980年以後機能喪失し、かえって格差を拡大し始めている。民主主義の中での不正と、民主主義への不正が横行し、民主主義社会の危機を増殖している。