民族分断の社会における暴力の再発予防-コソボの経験から

2016年6月26日

ジェノサイド研究 分科会報告

 

民族分断の社会における暴力の再発予防~コソボの経験から

 

文教大学大学院 国際学研究科

渡部真由美

 

キーワード:コソボ、移行期正義、記憶、民族浄化、平和構築、紛争予防、コソボ特別国際法廷、EU法の支配ミッション(EULEX) 

 

1.はじめに~「なぜ普通の人びとは暴力行為に加担するのか」

 民族間における紛争や対立は、直接的暴力の停止によってそのすべての問題が解決するとは限らず、むしろ潜在的暴力(Potentiality of Violence)を残しつつ民族共生の道を模索することが多い。本報告で言及するコソボも、表面的には平穏に見えることもあるが、依然として強い民族憎悪の感情を内包している社会が故に、セルビア系住民とアルバニア系住民は互いに積極的な交流を持たないまま辛うじて「共存」している。しかしながら、時にほんの些細な衝突が起爆剤となり、普段は静かに暮らす普通の人びとを巻き込んで大規模な暴力の応酬へと発展することもある。そして、急速に進行する暴力の現場では、多くの被害者のみならず多くの「普通の人びと」である加害者も存在する。なぜ、人びとは再び暴力に加担してしまうのだろうか。

 この加害の動機づけの問いに対し、ホロコースト研究をはじめ、ルワンダやボスニアでのジェノサイドの事象などを分析する学者たちが様々な議論を展開してきた。ゴールドハーゲン論争に代表されるような「意図主義派」および「機能主義派」がその例である。表面的には平和に見えても潜在的暴力が存在している場合、暴力を振るう相手への差別意識や非人間化、またはイデオロギーを利用しようとする政治的エリートの力や政策が人びとを動員し、最終的にはジェノサイドや民族浄化(エスニック・クレンジング)のような大規模な暴力行動へ発展することもあり得る。

 しかしながら、暴力行為が一旦収束したとしても、紛争後も解決されないままの行方不明者の問題や戦時中のあらゆる犯罪行為が罪に問われることなく野放し状態になっているとしたら、生死にかかわらず犠牲になった人々の怒りや悲しみ、そして無念さは社会を覆う空気となって存在し続ける。紛争当事者があたかも相手がそこに居ないかのように振る舞える空間があれば、対立という緊張状態を強いられずに日常を送ることができるかもしれない。他方、対立する民族同士が隣り合わせに「共存」しなければならない空間では、相手を無視する状態を作るのは容易ではない。紛争後の社会において、人びとはどのように紛争の過去を克服し和解できるのか。「記憶」はどう残され、次世代に伝えられるべきなのか。コソボ、そして民族の分断が今も色濃く残る街ミトロビツァの経験は、他の民族対立の国や地域に何を示唆できるのか。

 本報告では、このような問題関心のもと、ジェノサイド研究の重要設問のひとつでもある「普通の人びとはどのような状況、心理の中で暴力に加担するのか」という問いに対し、コソボの「過去」、「現在」、そして「未来」に着眼してその民族対立と潜在的暴力の有様について考察する。

 

2.コソボ紛争終結から17年~残された課題が生む「潜在的暴力」

 1999年のコソボ紛争をめぐる研究は、主としてセルビア系住民とアルバニア系住民の民族対立の歴史的、民族的、宗教的背景からはじまり、ユーゴスラビアの解体とそれに続くボスニアなどでの内戦の影響、コソボ紛争へのNATOの軍事介入の是非や紛争後の国連の暫定統治や欧州連合(EU)の関わり方など、マクロな視点からの分析が多く見受けられる。しかしながら、未解決の課題に焦点をあて、コソボの社会が持つ「潜在的暴力」を分析する重要性は、将来のこの地域の安定化を考える上で今なお一層高まってきていると考える。 

 コソボは2008年にはセルビア共和国から一方的に独立を宣言し、これに対して現在までに西側主要国を含む108か国(2016年1月現在)が国家承認している。全人口の9割を占めるアルバニア系住民にとって念願の独立宣言であったが、コソボをめぐる両民族の対立に終止符を打ったわけではない。(1)戦争犯罪人の不処罰問題、(2)セルビア系住民のコソボ帰還問題、(3)マイノリティ保護の課題、(4)いまだに1600人を超える両民族の行方不明者の捜索、(5)深刻な汚職や組織犯罪問題など課題は山積で、今もなお多くの残された課題が両民族の社会に影を落とし続けている。このように紛争時の加害者への不処罰、賠償や謝罪といった和解や赦しの問題、さらに戦時中の行方不明者を巡る真実の究明などが置き去りになっている社会では、どんなに物理的な復興が進んでいても持続可能な平和と安定を確保することは困難である。その場合、対立する民族への憎悪や復讐心は消えることなく、「潜在的暴力」としてその社会の根底の残ることが多く、人びとはこの「終わらない過去」の中での生活を余儀なくされる。現在のコソボも、その過去から抜け出せないジレンマの中にある。

 

3.民族分断の社会が抱える「潜在的暴力」の危険性~北部の街ミトロビツァを例に 

 紛争後の暴力の再発の因果関係を分析する上で、本報告ではさらにコソボ北部の街ミトロビツァで多発する暴力の背景と民族分断の環境がもたらす暴力の再発リスクを考えたい。コソボの他の地域と違い、ミトロビツァは、いまでも街の中心を流れるイヴァル川を隔てて民族分断が続いている。コソボ紛争終結後、アルバニア系住民からの復讐や迫害から逃れ、コソボを離れたセルビア系住民は23万人と言われ、この戦後の混乱期に北部に移住したセルビア系住民も多く、ミトロビツァの民族分断は1999年以降急速に進んだ。両民族を分ける橋(メイン・ブリッジ)の北側には、セルビア共和国の国旗が掲げられ、さらに、橋のたもとには「ブリッジ・ウォッチャー(Bridge Watchers)」と言われるセルビア民族主義の過激派が常駐して情勢の監視を行っているなど、川を挟んで民族対立のフロントラインとして注目を浴び続けてきている。

 2008年に独立を宣言したコソボだが、セルビア共和国にとってコソボは「セルビア王国の発祥の地」であり、コソボの戦いという「聖戦の地」であるとともにセルビア正教会の中心地というセルビア人の精神的な支柱であり続けているため、独立反対の立場を堅持している。それゆえに、ミトロビツァは紛争後の民族対立の象徴の街として、他のコソボの街と違って憎しみ合う両民族が物理的に対峙しているが故に、民族対立をめぐるデモや武力衝突が頻繁に発生している。憎悪感情が残る社会で、敵対する相手が「目に見える」環境は、暴力の再発リスクを高める要因の一つであるのかもしれない。

 また、ここにきてコソボ・セルビアの関係に変化の兆しがみられ、それがミトロビツァの民族分断と対立に新たなモメンタムをもたらしている。セルビア共和国は現在もコソボ独立に反対の姿勢を崩してはいないが、近年コソボ・セルビア双方が目指す早期のEU加盟を巡って情勢が変化しつつある。EUは、加盟交渉進展には両国の関係正常化を条件にしていることから、2011年からEUが仲介したコソボ・セルビア間の対話が始まり、2013年には双方が正常化のための歴史的な合意書に署名した。しかしながら、合意後もミトロビツァ地域の民族分断や対立は解消されたわけではないのは、近年増加しているこの地域を舞台とする武力衝突の激化が物語っている。コソボとの関係正常化交渉の進み具合によっては、強い反アルバニア感情とコソボ政府への統合に大きな不安感をもつセルビア系住民が「本国セルビアから見捨てられた」としてコソボ共和国の統治に対する大規模なデモや両民族の突発的な衝突がさらに起きることも懸念されており、2004年にミトロビツァで起きた小さな事件から派生した大規模な動乱のように、コソボ全土の治安情勢の悪化につながりかねないと考える。

 

4.暴力が表面化する要因分析~「潜在的暴力」を強化するものとは?

 長年、こう着状態が続いていたコソボ・セルビア間の関係正常化にわずかながら歩み寄りがみられているが、前述のとおりミトロビツァで表面化する暴力を起爆剤としてコソボ全土へ暴力が拡大する可能性が消えたわけではない。しかしながら、なぜ物理的な民族分断が見受けられない他の都市や地域にまで暴力は拡大してしまうのか。そして、多くの人々がその暴力行為に動員されてしまう理由はどこにあるのか。これらの問いを分析することは紛争後の平和構築の在り方だけでなく将来起こるかもしれない暴力再発のリスクを早期に警報できる可能性を持つと考える。故に、本報告では、実際に暴力が拡大してしまう理由を、2.で挙げた紛争後も残る課題が生む「潜在的暴力」を強化する背景を以下の3つの点で分析する。

(1)紛争後のコソボで新たに進む民族浄化の「記憶」形成

 現在、コソボでは、紛争で戦ったアルバニア系武装勢力であるコソボ解放軍(KLA)の戦勝記念碑や集団墓地が整備され、「加害」と「被害」の記憶形成がアルバニア系住民側の感情のまま進められている。戦後17年を経た今、戦争を知らない世代にとって、分断されているとはいえ両民族が一つの街で暮らすミトロビツァのような地域を除いては、対立する民族同士が直接交流することのない「日常」がある。皮肉にも、コソボの独立宣言では、「コソボは民主的で世俗的で多民族の国家となる」と謳われており、セルビア人など少数派の人権にも配慮するとするなど、アルバニア民族主義を想起させる要素は意識的に抑えてあるにもかかわらず、現実には、その精神に逆行する事象が様々な分野で起きている。このような「記憶」形成は、家族や親戚などから伝承される証言などによってもそれぞれの被害性が強化される結果となり、敵対する相手と交流する機会のない日常の中でも想像する「敵」に対して憎悪や復讐の感情を高められるのであろう。このような被害の記憶の継承が、復讐心を持つ暴力行為への加担を容易にする背景としていまでも根深く存在すると思われる。

(2)紛争後の政権運営と政治エリートたちの思惑

 コソボ紛争で武力闘争の主役を担った元コソボ解放軍(Kosovo Liberation Army (KLA))は、独立のために戦った「英雄」と見なされ、戦後には多くのアルバニア系住民に支持される形で政治的勢力として成長した。また、多くの元KLA幹部たちも、現大統領をはじめ、議会や警察などの公的機関の要職に就いている。紛争当時の国際メディア等の影響もあり、一般にセルビア警察や民兵がアルバニア系住民に行った数々の残虐行為ばかりが注目を浴びていたが、近年では旧ユーゴ国際刑事裁判所元判事やEU議員などによって、コソボ解放軍が当時行っていた捕虜に対する殺害や虐殺、さらには臓器売買疑惑などの戦争犯罪などが告発されてきている。この流れは、後述のコソボ特別国際法廷の設置決定に結びつくが、これらの疑惑に対していままで「英雄」として政治運営の中枢を担ってきた元幹部たちの反論や反発は大きく、彼らの支持者も特別国際法廷設置をめぐり過激な言動が増えてきている。同時に、若者の支持を集めるカリスマ的指導者を有する反セルビア・急進派でアルバニア民族主義を訴える政党(例:Vetevendosje!(邦語訳で「自己決定運動」という意味)なども、EUが仲介するセルビアとの関係正常化交渉に関して反セルビア発言を繰り返すことで政界での躍進を遂げている。最近では、これらの動きが若者を中心とした過激なデモ活動に発展するケースが多く見受けられ、より多くの支持者獲得のために政党間の権力抗争が激しさを増すなど、コソボ内の政治運営にも治安の不安定化をもたらす要素が存在すると考える。

(3)独立が加速させた貧困と格差~蓄積される社会への不満と不信感

 最後に、独立以後も低迷する経済問題が暴力の再発リスクに大きな影響を及ぼしていると考える。紛争によって国土が荒廃したコソボでは、国際支援とコソボ国外のディアスパラの資金投資によって、急速な市場経済化が進んだ。しかしながら、天然資源や主たる産業を持たない人口約180万の小国は、海外移民からの送金や開発援助に依存するしかない経済構造が続いており、それが深刻な貧困や格差を生んでいる。世界銀行によると、2011年時点の貧困層は約30%で、国民の約1割が1日1.2ユーロ(約163円)以下で暮らし、さらには失業率も西バルカンで一番高く、特に人口の半分を占める15~24歳の若者の失業率は約56%(2013年)と言われている。そのような状況下、2015年初頭には横行する汚職や将来への失望を理由にドイツなどに移住するため国外脱出する市民が急増したが、多くのケースで不法入国と見なされ強制送還されてきている。送還された市民のみならず、貧困や格差に喘ぐ人びとの失望は、不満や不信感として社会に蓄積され、それが政治批判や対立する民族への責任転嫁に結びつくことは容易に考えられる。ミトロビツァや他の都市で拡大したデモや暴動に参加する人々の多くが若者であることや、近年イスラム国に参加する若者も急増している事実を鑑みると、デモや武力衝突などの暴力行為への加担が、深刻な貧困や格差に苦しむ人々のはけ口として存在しているとも言えよう。

 

4.どのように「終わらない過去」と向き合うか~暴力の表面化を予防するための新たな取り組み

 以上のように、戦後17年が経とうとしているコソボは、社会的、政治的、経済的にさまざまな問題を抱えている。コソボの「潜在的暴力」を強化する過去の未解決な課題は、現在進行する「終わらせない」記憶の継承、「終わらせたくない」政治家たちの思惑、そして「終わらせられない」経済的状況から分析できる。それでは、いまだに民族対立のしこりを深く残すコソボは、過去を清算するためにこれからどのようにこれらの問題に対処すべきなのか。戦後17年を経て、これらを取り組むには、時間のみならず、人的資本や資金などコソボ国内外の支援が必要とされる。ミトロビツァだけでなく、他の地域で多発するデモや暴動に参加する多くの若者が直面している貧困や格差の問題も、暴力の再発防止を考える上で最優先される課題の一つである。

本報告では最後に、これらの課題の中でも紛争の記憶や真実の解明に密接に関連する分野の取り組みに焦点をあて、近年新たに進んでいる移行期正義へのEUの役割とその課題、そして市民社会の民族共生への取り組みについて言及したい。

(1)ヨーロッパ連合(EU)とコソボ特別国際法廷の設置

紛争終結から現在まで、EUは治安維持分野のみならず人道支援や平和構築支援に巨額の支援を提供してきた。1999年以降、EU加盟国だけでも40億ユーロもの支援金が人口わずか180万人のコソボに拠出され、これは国民1人当たりの金額に換算すると世界最大(the largest per capita)の供与額であると言われている(Capussela, 2015)。EUがコソボにこれだけの支援を惜しまない理由は、コソボとその周辺国の不安定化は西バルカン地域全体の不安定化につながると考えているからである。そのため、EUは1999年から展開していた国連コソボ暫定統治機構(United Nations Mission in Kosovo (UNMIK))を引き継ぎ、2008年の独立以降「EU法の支配ミッション・コソボ(EULEX)」という新たな警察・文民ミッションを組織してコソボ国内の治安・司法行政を進めている。そのEULEXが現在取り組む大きな課題が、今年中の設置が進められている特別国際法廷である。これは、先に触れた通り、1998年から2000年までの間にコソボ解放軍(KLA)が捕虜としたセルビア系住民などへの虐待や殺害、また臓器を摘出して密売していた疑惑に対し、コソボ議会が真実究明のために設置を決めたもので、実質的運営はEULEXが行うことになっている。戦後コソボでは、国連暫定統治時代から数度に渡り両民族の紛争時の加害を処罰する目的で移行期正義への取り組みが行われてきた。しかしながら、制度を確立し運営する中で、裁判の公平性や中立性を損ねる汚職問題や法廷での証人保護の問題などの欠陥が指摘され、充分に機能することはなかった(Williams, 2016)。今回設置される特別国際法廷は、これらの過去の教訓を踏まえ、コソボ国外(オランダ国ハーグ)に設置され、裁判官や検察官、その他の関連業務すべてにおいてコソボ人以外の職員の手によって運営されることが決まった。これにより、裁判の公平性や証人保護の問題は解消されると期待され、行方不明者の捜査や加害の真実追及が、両民族にとって過去からの課題と決別する機会を与えることになるかもしれない。一方で、コソボ解放のために戦った英雄であり、政権の中枢にいる元コソボ解放軍の人びとを裁く法廷を支えるEULEXに対し、アルバニア系住民の反感と不信感は依然強く、今後裁判の運営や審理の行方によっては民族間の対立感情を再び揺さぶることになりかねないと考える。

(2)市民社会が取り組む真実追及への対応

 加害者の不処罰問題や暗礁に乗り上げている1600人以上もの行方不明者の捜索、少数派民族の保護や避難民のコソボ帰還問題など、アルバニア系住民とセルビア系住民との間には民族対立の火種が数多く残されたままである。しかしながら、両民族間の和解促進や共生のために様々なプロジェクトを行う市民社会組織も多数存在している。たとえば、ミトロビツァに拠点を置き活動を展開する「コミュニティ・ビルディング・ミトロビツァ(Community Building Mitorovica (CBM)」は、同地域内で民族を問わず人道的観点から人権問題やコミュニティ開発、セルビア人の帰還問題などを積極的に取り組んでいる。また、同団体は、旧ユーゴスラビア内でもう一つの民族分断の街として注目を浴びているモスタル(ボスニア)との交流も進めていて、民族共生への取り組みの経験などを共有するなど、将来を見据えた平和構築や紛争予防のための活動を展開しようとしている。

 さらに近年注目すべき活動がある。セルビアのベオグラードとコソボのプリシュティナの双方に事務所を構えるNGO「人道法センター(Humanitarian Law Center(HLC))」が行っている、旧ユーゴスラビア圏内でおきた内戦の犠牲者に関する調査活動である。同センターは現在、「コソボ・メモリー・ブック(The Kosovo Memory Book)」というプロジェクトの名のもと、1998年1月から2000年12月までに殺害もしくは行方不明になっている人びとを調査しデータベース化を進めている。これは、紛争中に何が起きたのかを一人一人詳しく調査し、その結果をWeb上に一般公開するだけでなく、アルバニア人、セルビア人、ロマ人などの少数派民族を含むすべての紛争犠牲者の真実を一つのプロジェクトとして追求する取り組みである。誰でもアクセスできるそのデータベース化の作業は、その調査手法や質、そしてその意義において国際的にも高い評価を得ている。また、旧ユーゴ国際刑事裁判所(ICTY)やコソボ特別国際法廷が進めようとしている真実究明とともに、コソボ紛争の過去を改めて検証し、両民族の加害行為への謝罪、和解や赦し、さらには将来の世代のための歴史教育のツールとして機能することを期待されている。

 

参考文献

Capussela, A.L. (2015) State-Building in Kosovo: Democracy, Corruption and the EU in the Balkans. I. B. Tauris (New York)

Cimiotta, E. (2016) “The Specialist Chambers and the Specialist Prosecutor’s Office in Kosovo: The ‘Regionalization’ of International Criminal Justice in Context”, Journal of International Criminal Justice: Volume 14 (1):53-72

Humanitarian Law Center, The Kosovo Memory Book ( http://www.kosovomemorybook.org/?page_id=29&lang=de)

Williams, S. (2016). “The Specialist Chambers of Kosovo: The Limits of Internationalization?”. Journal of International Criminal Justice: Volume 14 (1): 25-51