東アジアにとっての日本国憲法──朝鮮半島から考える

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日本平和学会2016年度春季研究大会(5月26日)

 

東アジアにとっての日本国憲法

仁荷大学法学専門大学院

李京柱(リ キョンジュ)

 

キーワード: 日本の安全保障、日本に対する安全保障、

日本国憲法、有事と韓半島、東アジア共同体(平和への権利)

          

1.   日本の安全と日本に対する安全

 

韓半島有事を想定した安保関連法

安保関連法の強行採決(vs手続的民主主義)と施行(vs立憲主義)

リベラルの総結集(長谷部、小林までも)

リベラル側の改憲論も(井上―9条削除論、矢部―改憲論[1]、加藤―9条強化論[2]など)

日本の安全保障(例え、国民安保法制懇さえも)と日本に対する安全保障

安倍政権の兇爆性と馬力、軍事に焦点を置いた大国主義、野蛮な情熱[3]

相互の安全保障上の不安に関する感受性[4]

 

2.安保関連法と韓半島

2-1 安保関連法

 事態対処法―(自国への武力攻撃+他国への攻撃も=存立危機事態)[5]

      ->北朝鮮を警戒している米軍艦の護衛、ミサイル邀撃、邦人救出

      ->敵基地攻撃論:F-2戦闘機、レイーザ誘導型合同精密反撃(JDAM)+F35 

 重要影響事態法(周辺事態から重要影響事態へ、後方地域から非戦闘現場に)

      ->小型航空機などにようるMV22への弾薬提供、自衛隊の韓半島上陸

      ->「国連軍」と日本との駐屯軍地位協定:7つの後方基地と兵站

 改正自衛隊法(武器使用の自己保存から任務遂行へ)

 新設国際平和支援法(国連軍でなく多国籍軍支援に)

 危機解釈の判断主体

 

2-2平和外交政策から軍事外交政策へ

 武器輸出3原則―武器輸出新3原則(2014.6.17)

 防衛装備庁新設:科学技術政策(民生からデゥアルユース)[6]vs1987年名古屋大学平和憲章

         軍事の経済戦略化(軍産複合体化)

 特定秘密保護法:安保を理由とした非公開の拡大

 日米韓の軍事情報協力

 

3. 日本に対する安全保障と東アジア

3─1 日本国憲法の誕生

 (a)六面体としての日本国憲法[7]

 (b)日本に対する安全保障としての日本国憲法

   ポツダム宣言と日本、韓国[8]- 天皇制と9条 

   非軍事化と9条―日本国憲法の誕生/非武装条約構想と9条[9]

           デゥアルユースの禁止など

3─1 安保関連法以後の日本

 同盟調整メカニズム-日米共同司令部(Combined Forces Command)

 同盟調整グループ(Alliance Coordination Group)

 レベル別共同調整本部(Component Coordination Centers)

 共同作戦計画-密約の作戦計画化など

 

4. 日本国憲法9条とアジアの平和的未来

 

 Asian Paradox[10]と民衆を人質にした敵対的共存共生[11]の東アジアから平和共同体へ

 他者に依存する存在からの出発[12]

 

 緊張緩和のための段階的相互行為(Graduated Reciprocation in Tension Reduction)[13]

 2005年6者会談―9.19共同声明(平和フォーラム)と2.13合議精神の読み直し[14]

 アメリカの覇権秩序作りとその下での韓日関係作り(65日韓条約、2015慰安婦合意)vs

 覇権秩序そのものを緩和するための行動[15] /韓日関係作り

 

 民間六者会談としてのウランバートル・プロセス

 光復・戦後70周年と2015年東アジア平和宣言

 GPPAC(武力紛争予防のためのグローバル・パートナシップ)[16]

 非核地帯化構想など

 

 安保と安全の主体の転換と多様化(平和への権利)[17]

  安全を保障するのは国家だという神話からの脱却[18]

 

 日本の安全と日本に対する安全の併用の道―日本国憲法前文と9条

  雨森芳洲、’誠信の交わりと申す事、お互いに欺かず、争わず’(交隣提醒及び交隣須知)[19]

  特に、米の軍事変換後の国際情勢下での国際化vs平和的国際化(貢献)

  戦争に巻き込まれない体制作り

 

[1] フィリピンの軍事基地無くす憲法改正、矢部宏治『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』(集英社、2014年)。

[2] フィリピン方式+国連中心主義、加藤典洋『戦後入門』(ちくま新書、2015年)。

[3] 渡辺治『現代史の中の安倍政権』(かもがわ出版、2016年)4、41、42、263頁。

[4] 遠藤乾『グロバル・コモンズ』(岩波書店、2015年)355頁。

[5] 「国の存立」という主観的要素による限定容認論の不安定さについては、浦田一郎、『集団的自衛権限定容認とはなにか』(日本評論社、2016年4月)67-68頁を参照されたい。

[6] 日本非武装条約案(1946.1~2)では、軍事物資や軍事転用可能な資源の生産輸入の禁止を規定。

[7] Akihiko Kimijima, Six faces of Article 9: Japans’s Peace Constitution at Crossroads, Dec.3-4,2015.;君島東彦「六面体としての憲法9条」『戦争と平和を問い直す』(法律文化社、2014年)。

[8] 李京柱『日韓の占領管理体制に関する比較憲法的考察』(一橋大学、1997年)。

[9] 三輪隆「日本非武装条約構想とマッカーサー・ノート第2項」『埼玉大学紀要(教育学部)』47巻第1号(1988年)52頁以下。

[10] 木宮正史『朝鮮半島と東アジア』(岩波書店、2015年)3頁以下。

[11] 白楽晴『揺れる分断体制』(創作と批評社、1998年)

[12] 岡野八代「安保を問い直す」『戦争に抗する』(岩波書店、2015年)209頁以下

[13] 遠藤乾『グローバル・コモンズ』(岩波書店、2015年)355頁。

[14] 1994年ジュネブ合意、1999年Perry Process-相互脅威の段階的縮減

[15] 木宮正史『朝鮮半島と東アジア』 (岩波書店、2015年)。

[16] 君島東彦「国連と市民社会の現在」『日本の科学者』(本の泉社、2015年)21頁以下。

  君島東彦「安全保障の市民的視点」『立憲的ダイナミズム』(岩波書店、2014年)。

[17] 李京柱『平和権の理解』(韓国、社会評論社、2014年);笹本純、前田朗『 平和への権利を世界に - 国連宣言実現の動向と運動』(かもがわ出版、2011年)。

[18] 岡野八代「安保を問い直す」『戦争に抗する』(岩波書店、2015年)200頁以下 

[19] 佐々木悦也、「雨森芳洲の国際感覚」、『朝鮮通信使と京都』(高麗美術館、2013年)60頁、仲尾宏、『朝鮮通信使』(岩波新書、2007年)105頁以下。

 

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