2015年度春季研究大会を下記の通り、開催いたします。日本平和学会は敗戦70年の節目を、広島(今大会)と沖縄(秋季研究集会)で迎えます。万人にとっての願いである「平和」の条件を科学的に探究すべく1973年に設立されて以来、日本平和学会が現在ほどその存在理由を問われた時代はありません。なし崩しの軍国化と社会の分断化の中で、将来に向けた共通の「平和」の論理を立て直すことができるのか。今、平和研究は真に試されています。
このたびは、広島市をはじめ、多くの方々より並みならぬご支援をいただきました。開催校の皆さん、そして企画委員会をはじめとする学会執行部も力をつくして準備に努めました。例年にもまして、多くの充実した企画が開催される予定です。会員のみなさまにもできるだけ多く広島にご参集いただき、現況に活路を見出すための議論にお力添えいただければ幸いです。
なお、プログラムの変更や報告レジュメ・報告ペーパーにつきましては、随時学会ホームページ(http://www.psaj.org)上にてお知らせいたしますので、こちらを参照ください。研究大会・研究集会では、非会員の聴講も可能です。今回は広島の一般市民の方々も多く参加される予定です。みなさまもぜひご友人等をお誘い合わせの上、ご参加ください。
日本平和学会第21期会長 佐々木寛
<開催趣旨>
大会テーマ
「敗戦後70年の地点で平和を再定位する──ヒロシマで考えるアジア太平洋平和秩序への道筋」
2015年、われわれはアジア太平洋戦争の敗戦70年を迎える。大日本帝国の負の遺産を自覚的・主体的に克服する努力が不足したまま、パックス・アメリカーナに組み込まれることで「国際社会に復帰」した戦後日本は、それでもなお、被爆体験を含む敗戦体験と憲法平和主義を拠り所として、軍事力を脱正統化し、軍事力を自制する法制度・政策を維持して、「平和国家」として歩んできた。
もちろん「平和国家」70年に多くの弱点がある。かつて植民地支配し、侵略したアジア諸地域の人々に対する加害責任の自覚の弱さ、朝鮮半島と沖縄の軍事化が「日本の平和」とセットになっている面があること、戦後日本の平和主義は孤立主義的な傾向が強く、平和で公正な世界秩序をつくり出していく主体的・非軍事的な努力が弱かったこと等々。
しかし、グローバルなパワーシフト──米国の覇権の衰退/中国の台頭──が進行している現在、そして日本経済の成長が終焉した現在、日本の軍事力の自制を解き放とうとする動きが急速に進行している。「積極的平和主義」「抑止力強化」の名のもとに、自衛隊の活動を質的・量的に大幅に拡大する法案が提案されている。その先には日本国憲法9条の改正が企図されている。われわれ平和研究者はこの動きを座視することができない。
われわれは、敗戦後70年の地点で平和をどのように再定位するのか──何を継承し、何が批判されるべきなのか──、これからのアジア太平洋平和秩序をどのように展望し、どのように構築していくのか、巨大な課題を突き付けられている。今回の研究大会はヒロシマの地でこの課題に取り組みたい。具体的には、核兵器・原発を克服する道筋、平和主義概念の明晰化、戦争の記憶の継承、「復興」の問い直し、東アジア平和秩序へのヨーロッパからの示唆、東アジアの民衆の連帯の可能性等々の課題に、韓国の研究者、中国の研究者とともに、多様なアプローチで迫りたい。
日本平和学会第21期企画委員長 君島東彦