湾岸戦争以降、国連の平和維持活動が急増し、日本も1992年に初めて参加しました。安倍首相は安保関連法整備に際して、国際社会の平和と安定への積極的な貢献の必要性があると強調しています。
しかし、ここでは、自衛隊の海外出動に関する憲法9条の制約の下で、どのような活動が「武力の行使」に該当しないかが問題となります。2015年の法整備でこの問題に関わるのは、国連平和維持活動法(PKO法)の改正と、新法としての「国際平和支援法案」です。
憲法9条が禁ずる「武力の行使」に当たらないことを確保するために、現行法では、①我が国自身が「武力の行使」をしないこと、②我が国自身は直接「武力の行使」をしていない場合でも、他国による「武力の行使」と「一体化」しないこと、が必要とされてきました。
「国際平和支援法案」が想定する自衛隊の行動は、捜索救助、船舶検査、さらに、いわゆる「後方支援」(物品や役務の「共同して対処する国の軍隊」への提供)を想定しています。ここでいう「物品」には武器も含まれており、輸送が認められています。また、支援を行なう場所については、「現に戦闘行為が行われている現場では実施しない」とされています。これには、戦闘地域では支援活動を行わないと規定することにより、憲法9条との整合性を維持しようという意図があります。「後方支援」は「現に戦闘行為が行われている場所」では行われないから、米軍等との武力行使とは一体にならず、憲法上問題ないというのです。
新法としての「国際平和支援法案」は、時限立法であったテロ対策特別措置法およびイラク人道復興支援特別措置法(いずれも現在では失効)を期限のない恒久法にしたものですが、イラク人道復興支援特別措置法の国会質疑で、当時の小泉首相が「どこが戦闘地域で、どこが非戦闘地域か、日本の首相にわかる方がおかしい。自衛隊が活動している地域は非戦闘地域だ」と答えたように、実際には「戦闘地域」と「非戦闘地域」の区分は容易なものではありません。
戦場で後方に位置し、前線の部隊のために軍需品・食糧等の供給・補充等を任務とする活動を「兵站」といいますが、米軍海兵隊の教本では、「兵站は戦闘と一体不可分」「全ての戦争行動の中心構成要素」とされており、国際法上も、1949年ジュネーブ条約第1追加議定書が定めるように、軍事目標として攻撃の対象になります。日本軍が日中戦争時に、米英等が蒋介石への補給に用いた「援蒋ルート」を攻撃したように、兵站は戦場そのものです。太平洋戦争で米軍が徹底的に攻撃したのも日本の軍需物資を運ぶ船でした。武力行使と一体にならない「後方支援」という見解は、軍事の非常識と言わざるを得ません。(麻生多聞)
参考URL
BLOGOS「そもそも『安保関連法案』とは? PKOや他国軍の後方支援をどう規定」