23. 日本会議とは何でしょうか。

 日本会議(ニッポンカイギ)は1997年5月30日に「日本を守る国民会議」と「日本を守る会」を統合して結成された日本最大の改憲右翼団体であり、会員数3万8000人を擁し、全国47都道府県すべてに本部、区市町村に242の支部を持っており(『アエラ』2015年8月31日号)、「草の根」の「国民運動」を展開しています。

 日本会議の前身の一つ「日本を守る会」(1974年4月結成)は生長の家の創始者である谷口雅春ら新宗教・神道系の宗教団体を中心に結成され、1975年に「昭和50年を祝う国民の集い」を開催して右翼的国民運動を展開し始めました。一方「日本を守る国民会議」(1981年結成)は、1978年に石田和外・元最高裁長官の呼びかけで発足した「元号法制化実現国民会議」の延長線上に、右翼的な学者文化人や経営者を中心として再出発したものです。

 したがって、前史を含めると、日本会議の右翼的国民運動はすでに40年の歴史を持っており、ホームページによれば、その実績として、①元号法制化、②皇室奉祝運動、③教育「正常」化と歴史教科書編纂、④戦没者追悼行事、⑤自衛隊PKO活動支援、⑥憲法改正提唱などを挙げています。この国民運動の特徴は政治運動と直接的に呼応していく点にあり、日本会議と連携する「日本会議国会議員懇談会」(平沼赳夫会長)には自民党を中心に、民主党、次世代の党、維新の党など超党派の281人が(前掲『アエラ』)加盟しています。

 また、日本会議は神社本庁と密接な関係があり、日本会議の副会長に神社本庁総長・田中恆清(石清水八幡宮宮司)、同じく顧問に神社本庁統理の北白川道久(元・伊勢神宮大宮司)が就くなど、多くの神社関係者が日本会議の役員を務めています。そのため、神社本庁が1969年に組織した「神道政治連盟」(神政連)は今では日本会議と緊密に連携し、靖国神社行事の国家儀礼化、選択的夫婦別姓制度の導入反対、皇室と日本文化の尊重などの運動に取り組んでおり、「神道政治連盟国会議員懇談会」には303人(2015年8月現在)の国会議員が参加しています。

 極めて重大なのは、安倍政権が「日本会議政権」と言っても過言ではないほど、切っても切れない関係になっていることです。2015年10月に発足した第3次安倍改造内閣の閣僚20人のうち少なくとも12人が「日本会議国会議員懇談会」のメンバーであると見られ、「神道政治連盟国会議員懇談会」の参加者17人と合わせると、実に政権の9割(20人中18人)を右翼改憲勢力が占めていることになります。安倍政権が国民世論や国内外の多様な意見を受け止めることができず、対外的にも対内的にも強権的に振る舞わざるを得ないのも、このように特異な勢力の人士ばかりで内閣を構成しているが故ではないでしょうか。

 ところで、参議院で安保関連法案が審議中であった2015年8月11日、この法案を支持し早期成立をめざす立場から「平和安全法制の早期成立を求める国民フォーラム」なる会が381人の呼びかけ人・賛同者で設立されました。このフォーラムの声明文は基本的に安倍政権の主張をなぞったものに過ぎませんが、「平和安全法案は戦争を抑止するためであり、『戦争法案』ではない。にもかかわらず、『徴兵制に行き着く』などとあり得ない危機を煽るのは、無責任であり、非現実的である」と安保法制反対の行動に起ち上がった人びとの声を封殺する態度を示しています。このフォーラムの設立呼びかけ人のメンバーを見ると、日本会議会長の田久保忠衛と代表委員の長谷川三千子が名を連ね、ほかにも櫻井よしこ、大原康男、中西輝政、渡部昇一ら改憲派の学者文化人、安保法制合憲を唱えた憲法学者の百地章、西修ら、「いつもの」顔ぶれが並んでいます。

 国民会議は、政権与党や右派議員に密着することで強力な発言力・政治力を有していますし、遺族会や宗教団体など「草の根」レベルの右派勢力を背景にしており、その動向には引き続き注意を払わなければなりません。しかし、彼らが特異な持論を強く主張すればするほど、国民世論との乖離は広がり、共感を失っていくことも間違いないでしょう。(勝村 誠)

 

参考文献

中西輝政+日本会議(編・著)『日本人として知っておきたい皇室のこと』PHP研究所、2008年