14.中国と日本の関係はどうなっているでしょうか

 1990年代初めに日中関係は潮目の変化を迎えました。1972年に国交を正常化して以来、冷戦構造の下で日本が台頭していた時代から、グローバル化の進展とともに中国が台頭する時代への転換が始まったのです。

 70年代や80年代には双方の国民感情も良好で、中国の経済発展への日本の協力が二国関係の中心を占めていました。しかし、90年前後にはソ連の脅威が消失する一方、日本では経済バブルが破裂し、中国ではいわゆる天安門事件が発生して愛国主義教育を強化するようになりました。それからは、日中関係の強靭性と脆弱性の対照が顕著になっています。

 強靭な面としては、言うまでもなく経済交流、それから日本における中国古典文化の人気や、中国でのアニメなど日本の現代文化の流行といった文化交流があります。さらには海賊や環境汚染、麻薬や伝染病といったいわゆる非伝統的脅威への共同対処などを挙げることができます。

 脆弱な面には、日中戦争の評価や総理大臣の靖国神社参拝などをめぐる歴史認識問題や、尖閣諸島の領有権をめぐる認識の不一致、そして中国の軍拡と海洋進出に伴って突出するようになった安全保障の問題などがあります。

 双方が注意せねばならない脆弱性の焦点は尖閣諸島をめぐる問題です。冷戦後、中国側は徐々に東シナ海での活動を活発化し、2010年には、尖閣諸島の領海内で漁をしていた中国漁船が、追跡した海上保安庁の船に2回体当たりする事件が起きました。12年、日本政府が平穏な状態の維持管理のため三つの島を民間の地権者から購入すると、中国側は巡視船を領海内に頻繁に送るようになり、力による現状変更を試みています。

   しかし2014年より、中国は関係改善へと対日姿勢を転換しました。その要因としては、軍用機衝突など不意の事故により事態が一層悪化する危険性の察知、日本企業の対中ビジネス意欲の減退への対応、習近平の権力基盤固めの進展(対日弱腰外交批判への考慮の不用)、対米関係の難航による対日関係の改善意欲の昂進などが挙げられます。

   今の日中関係は協調と対立の時代にあると言えるでしょう。世界第二位と第三位の経済大国は、関係を安定発展させることに利益と責任を有しています。しかし、両国民の間の情報ギャップや認識ギャップの大きさは危機的な状況です。力の均衡に意を払い、相互依存関係を発展させるのと同時に、知識交流や青少年交流を進めて知識や規範を共有することが喫緊の課題になっています。(高原明生)

 

参考文献

国分良成、染谷芳秀、高原明生、川島真『日中関係史』有斐閣、2013年。