100.SEALDsとは何でしょうか。

 SEALDsとは、”Students Emergency Action for Liberal Democracy - s"の略であり、日本の自由と民主主義を守る盾となるべく、学生によって立ち上げられた緊急アクションです。大学生を中心とした10代から20代前半の若い世代が担い手となって、日本の自由民主主義の伝統たる戦後民主主義を守るために、従来の政治的枠組みを越えたリベラル勢力の結集を求め、実際に安関連法案に反対する全野党の連携実現に貢献しています。

 2011年以降の一連のアラブの春やスペインの15M運動、日本の脱原発運動や再稼働反対運動、米国ウォール街におけるオキュパイ運動などのグローバル・ジャスティス運動(論点99を参照)と同様に、政府法案に対抗すべく社会科学の知識を学びつつ日常の言葉やクラブ・カルチャー等のサブカルチャー資本をコール(掛け声)やフライヤー(チラシ)等に活用したSEALDsは、運動体としてはLINEやTwitter、facebook等のSNSを活用した、ネットワーク型の組織となっています。

 もともとは原発再稼働反対に抗議している毎週金曜日の官邸前抗議を見学しに来ていた大学生たちや、2013年6月に結成された国際基督教大学のAPI(Action for Political Issues)ならびに「秘密保護法を考える全国学生緊急大集会」に参加した学生、2014年に明治学院大学の学生が集まった「特定秘密保護法を考える会」を中心に、2014年12月SASPL(特定秘密保護法に反対する学生有志の会Students Against Secret Protection Law)が結成され、それらが2015年5月にはSEALDsへと発展しました。日本中の学生が参加したことによって、SEALDs KANSAIやSEALDs TOHOKU、SEALDS RYUKYUなどが日本各地で展開されています。同時期に声を上げた札幌の「戦争したくなくてふるえる」デモ等とも連携しています。

 SEALDsは単なる若者の政治運動の域を越えて、ベ平連(ベトナムに平和を!市民連合)のように、無党派で非暴力を前面に押し出し、一般の人々はもとより研究者や国内外のメディアまで、広範な支持層を獲得する「文化=政治」運動となりました。この動きに触発されてTns-Soul(Teens Stand up to Oppose War Law)のような、高校生を中心とした安保反対のグループも組織されている。若者が政治に対して声を上げるようになったことで、日本のメディアで流布してきた「若者の政治離れ」という既存のフレーミングは、ある程度相対化されつつあると云えるでしょう。

 いわゆる「二〇一五年安保」でSEALDsは、2015年6月に渋谷で行った街宣で、安保法案に反対する全野党に呼びかけて発言の場を設けることで野党間連携の機会を創出し、さらには第189回国会終了後の民主党と維新の党の間の協議枠組みづくりにも貢献しました。

 SEALDsに触発された人々がOLDsやMIDDLEsなどの自己組織的な団体を立ち上げるなど、安保関連法案反対運動が全世代的に波及させるとともに、2015年8月30日には他の団体と連携しつつ労組等の旧来の社会運動の組織動員の手法とは別の文化動員(フーコー)を用いることで、国会前と国会周辺で数十万人(主催者発表では12万人、SEALDs発表で述べ35万人)もの参加者を自然動員させることに成功しました。このSEALDsの呼びかけがきっかけとなり、同日には日本全国300箇所で100万人を越える人々が安保法案に反対の声を上げました。(五野井郁夫)

 

参考資料

SEALDs ウェブサイト http://www.sealds.com/