危機の20年と現在との絶えざる対話: カー、アレント、京都学派
龍谷大学国際文化学部
清水耕介
平和学会関西例会
2013/6/8
於 大阪女学院大学
1. 背景 ‘a whole from fragments’
l Non-Western IRTの隆盛(特に中国の「天下理論」)
l アメリカ覇権の衰退
l 消費社会の出現
l 「自分」(Self) の絶滅と「個人」(Individual) の登場
2. 危機の20年とは?
l E.H.カー『危機の20年:1919-1939』(東京:岩波書店)
l 自由主義と「個人」の生産
² 一般化された善き消費者としての個人
² c.f. 戸坂潤の「自分」概念『日本イデオロギー論』(東京:岩波書店)
l 現代との類似点
² 「文明の衝突」
Ø 西洋vs東洋
Ø 西洋vsイスラーム
中国
Ø 企業の多国籍化と消費社会の出現
Ø 公共性の消失とナショナリズム(排外主義)の勃興
Ø このコンテクストでのNon-Western IRTとKS(後述)
3. カーとアレントの描いた大戦間期
l E.H. カー
² 実証主義vs観念論
² (暴力的)帝国主義秩序に裏打ちされた(理性的)国際秩序
² 普遍化された自由主義と自由主義(ユートピアニズム)批判
² 民主化による大衆の政治参加→政治の大衆化・ナショナリズムの民主化
l ハンナ・アレント
² 大衆の政治参加と近代化→政治が私的利害関係の調整の場となる
² 一般意志の消滅←プライベート>パブリック
² 思考停止→「自分」から「個人」へ
² 同一化された個人→差異の消滅→公共空間の壊滅→全体主義
² 西洋的理性に対する東洋的「血」「歴史」「精神」
² 宗教化するカリスマ的リーダー
4. Non-Western IRTと京都学派
l 現代と危機の20年の類似性→立て続けに出版される関連書籍
² 井上寿一(2006)『戦前日本のグローバリズム:1930年代の教訓』(東京:新潮社)
² 加藤陽子(2005)『戦争の論理:日露戦争から太平洋戦争まで』(東京:勁草書房)
² 武田知弘(2013)『戦前の生活』(東京:筑摩書房)
² 宜野座菜央見(2013)『モダン・ライフと戦争』(東京:吉川弘文館)
l 京都学派関係
² 西田哲学:
Ø 小林敏明(2011)『西田幾多郎の憂鬱』(東京:岩波書店)
Ø 小坂国継(2008)『西田哲学を読む1〜3』(東京:大東出版)
Ø 藤田正勝(2011)『西田幾多郎の思索世界』(東京:岩波書店)
Ø Chris Goto-Jones (2005)Political Philosophy of Japan: Nishida, the Kyoto School and Co-prosperity (London: Routledge)
² 京都学派
Ø 吉田傑俊(2011)『「京都学派」の哲学』(東京:大月書店)
Ø Chris Goto-Jones (2008) Re-politicising the Kyoto School as Philosophy (London: Routledge)
Ø David Williams (2004) Defending Japan’s Pacific War: The Kyoto School Philosophers and Post-White Power (London: RoutledgeCurzon)
Ø Robert Carter (2013) The Kyoto School: An Introduction (Albany: SUNY Press)
² 近代の超克
Ø Richard Claichman (2008) Overcoming Modernity: Cultural Identity in Wartime Japan (New York: Columbia University Press)
l Non-Western IRT関係
Ø Amitav Acharya and Barry Buzan (2010) Non-Western International Relations Theory: Perspectives on and beyond Asia (London: Routledge)
Ø Giorgio Shani (2010) Sikh Nationalism and Identity in a Global Age (London: Routledge)
Ø Robbie Shilliam (2012) International Relations and non-Western Thought: Imperialism, Colonialism and Modernity (London: Routledge)
Ø Chih-Yu Shih (2012) Civilization, Nation and Modernity in East Asia (London: Routledge)
l 非西洋に対するロマンティックなまなざし
² 文化論の隆盛(e.g. Clash of Civilizations; the End of History; Soft Power)
² 同じ定義上の「異なる」文化(e.g. 日本文化、中国文化、イスラーム文化)
² 「他者」に対するまなざしとしての文化論と文化論批判としての批判的文化論
² 異なる定義上の文化の可能性(e.g. コミュニカティブな文化;対話的文化→場所としての文化)
5. まとめ