北朝鮮の核兵器開発問題と日本

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「北朝鮮の核兵器開発問題と日本」

 

綛田芳憲(北九州市立大学准教授)

 

 

Ⅰ.北朝鮮の軍事的「脅威」の増大

  ・核兵器開発、弾道ミサイル開発の進展→核ミサイル

 

 

Ⅱ.日本の安保政策

1)日米同盟の強化(米の拡大核抑止力の活用など)(→資料参照)

2)抑止力の強化、専守防衛政策の見直し

3)潜在的核抑止力としての原発維持(→資料参照)

4)   社会的基盤の強化=「国を愛する心の涵養」←『国家安全保障戦略』(案)

 

      

Ⅲ.北朝鮮の「脅威」の増大(一般的見解)

  「北朝鮮は、圧力を掛けても、対話を試みても核開発をやめようとしない。非核化の合意をしても守らない。」

  

 

Ⅳ.核問題悪化の経緯(国際的要因に焦点)

 

 1.米朝枠組合意(1994-10

1)   朝、核施設の凍結、封印、将来の解体

2)   軽水炉2基の提供(2003年目処に)

3)   米、軽水炉、1基目がほぼ完成するまで、毎年重油50万トン提供

4)   米朝両国は、政治的、経済的関係の完全な正常化に向けて行動

5)   米は、核兵器による脅し、その使用をしない旨の公式の保証を提供

  

   履行状況

1)   凍結、封印実施

2)   建設遅れ(1997-8に開始、その後も遅延、2003年完成困難に)

3)   遅延あるも実施

4)   進展少

5)   協定、条約のような保証なし

 

 2.枠組み合意の崩壊

  ・ブッシュ政権(2001〜)の強硬姿勢=通常兵力削減要求、先制攻撃政策、「悪の枢軸」

  ・ウラン濃縮疑惑浮上(2002-10)=米、「北がウラン濃縮計画の保有を認めた」

    →米、重油供給中止→北、核施設凍結解除=プルトニウム抽出再開

 

 36ヵ国協議と第1回核実験

  ・2003-86か国協議開始

  ・2005-9-19:初の共同声明

  ・2005-9-15:米、北に金融制裁

   →2006-7:北、ミサイル実験→安保理決議1695(非難)→北の不満

   →2006-10:北、核実験→安保理決議1718(制裁)

   

 

 

 46か国協議での合意(2007-210

1)   朝:核施設凍結・無能力化、核計画報告書提出

2)   米など:重油100万トン供与  

3)   米:金融制裁解除、テロ支援国家指定解除

4)   米朝・日朝:国交正常化

 

  履行状況

1)   凍結=実施、無能力化=11段階中8段階、報告書=提出(2008-5

2)   重油供与=約50万トン日、提供拒否

3)   金融制裁解除=実施。テロ支援国家指定解除=実施(2008-10

4)   米朝・日朝国交正常化=ほとんど進展せず

 

 56か国協議の中断

  ・米日韓:査察(サンプリング)受け入れ要求

  ・朝:限定的査察は可、サンプリングは拒否追加要求の前に、合意の履行が必要

 

 66か国協議の再開を巡る対立

  ・朝中:前提条件なし

  ・米韓日:前提条件=朝鮮の非核化に向けた具体的行動

 

 7.第2回核実験

  ・2009-4:ロケット発射(衛星打ち上げ名目)→安保理議長声明(非難)

  ・2009-5:核実験→安保理決議1874(制裁強化)

  

 8.第3回核実験

  ・2012-4:ロケット発射(衛星打ち上げ名目)→安保理議長声明(非難)

  ・2012-12:ロケット発射(衛星打ち上げ名目)→安保理決議2087(制裁強化)

  ・2013-2:核実験→安保理決議2094(制裁強化)

 

 

V.まとめ

1)   核問題悪化の客観的理解の不足

2)   北朝鮮の積極性と米国の消極性、敵対性(ブッシュ政権)

3)   北朝鮮の不信感(特に対米)、二重基準への不満

4)   核兵器開発の進展による非核化の困難性と関係改善の可能性

5)   日本の対北朝鮮政策の転換の必要性

 

 

  


(資料)核抑止力に対する日本の考え方

 

.米国の核の傘(拡大核抑止)の活用

 

1.『防衛計画の大綱』(20101217日)

 

現実に核兵器が存在する間は、核抑止力を中心とする米国の拡大抑止は不可欠であり、その信頼性の維持・強化のために米国と緊密に協力していくとともに、併せて弾道ミサイル防衛や国民保護を含む我が国自身の取組により適切に対応する。」

 

2.核兵器の非合法化共同声明、日本賛同せず(声明:20121022日) 

 

   国連総会第1委員会(軍縮):核兵器の非人道性を訴え、核使用を国際法上非合法にする努力をするよう各国に求める共同声明(スイス、ノルウェー、タイ、チリなど30カ国以上)

   賛同しなかった理由

 「米国の核戦力を含む『抑止力』に依存した日本の安保政策と整合性が取れない」

   (『日本経済新聞(電子版)』20121023日)

 

 

.潜在的核抑止力としての原子力発電の推進

 

1.「社説」『読売新聞』(2011810日)

 

「日本は、平和利用を前提に、核兵器材料にもなるプルトニウムの活用を国際的に認められ、高水準の原子力技術を保持してきた。これが、潜在的な核抑止力としても機能している。」

 

2.石破茂政調会長(「原発 私はこう思う」『報道ステーション』2011816日)

 

 「日本は核を持つべきだと私は思っておりません。しかし同時に、日本は(核を)作ろうと思えばいつでも作れる。1年以内に作れると。それはひとつの抑止力ではあるのでしょう

 それを本当に放棄していいですかということは、それこそもっと突き詰めた議論が必要だと思うし、私は放棄すべきだとは思わない。

 なぜならば、日本の周りはロシアであり、中国であり、北朝鮮であり、そしてアメリカ合衆国であり、同盟国であるか否かを捨象して言えば、核保有国が日本の周りを取り囲んでおり、そして弾道ミサイルの技術をすべての国が持っていることは決して忘れるべきではありません。」

 

3.原子力基本法の改正(2012620日)

 

「原子力の研究や利用を『平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に』とした基本法二条に一項を追加。原子力利用の『安全確保』は『国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として』行うとした。」

(『東京新聞』2012621日朝刊)

 

原子力基本法

第一章 総則

(基本方針)

第二条  原子力利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果を公開し、進んで国際協力に資するものとする。

 前項の安全の確保については、確立された国際的な基準を踏まえ、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として、行うものとする。

 

 (注:第2項が追加された)