特集「脱植民地化のための平和学」
本号の企画では、まず、植民地化が近代に及ぼした影響の大きさやその構造を認識する作業が平和学の重要な課題であること、そして植民地主義が決して清算されることなく現在も継続していることを基本認識としています。例えば、日本の平和主義を危うくしているひとつの背景には、「戦争」対「平和」という問題提起が頻繁に行われてきた反面、その構造の土台となる「植民地化と支配・搾取」の問題への取組みが弱体であったことは否めません。しかしこの問題は平和学がめざしてきた「構造的暴力」の解決とも密接な関係にあるはずです。グローバルに見回しても、中東、アフリカ、中南米などの紛争や内戦の遠因に依然として植民地主義の背景があることは事実であり、貧困の解消、開発・南北問題に植民地主義が大きな影を落としていることも明らかです。さらに、脱植民地化という国連のプログラムから漏れ落ちた人民として先住民族があり、こうした視点が確立されない限り、平和学の実践も本質を欠く場合が少なくありません。「植民地化と支配・搾取」へ認識の欠如は、「植民地」という概念の混乱、本来の「植民地」が植民地として認識されない問題、旧「植民地」との間に残る植民地構造の根深さ、新たな植民地主義の展開につながっています。
本『平和研究』第47号は、これらの問題意識の下、「脱植民地化のための平和学」をテーマに「植民地化-脱植民地化」という文脈で考えられる問題に、平和学が具体的にどう取り組んできたのか、あるいは取り組んでこなかったのかを幅広い視点から検証します。また、その事例を単に報告するだけでなく、従来の平和学が特定の問題に焦点を絞ってきたが故に、むしろその視界から外されてきた「植民地化」の認識の構造にグローバルな視点から踏み込みたいと考えます。こうした作業は、さらに進んで平和学自体の脱植民地化となるでしょうし、国家と国際社会を前提とする近代の枠組みを問い直すという古くて新しい課題との取り組みにつながるでしょう。
ついては、この特集テーマに関わる投稿文を募集します。ふるってご応募下さい。
また、この特集テーマ以外にも、平和研究の発展に貢献する論文であれば、「自由投稿」の枠で投稿を受け付け、査読の対象といたします。
投稿された論文は査読のうえ、編集委員会が最終的な掲載の可否を決定いたします。
分量:1万6000字以内(厳守)
投稿の申込み締切り:2015年11月30日(月)
投稿原稿の提出締切り:2016年2月29日(月) 投稿申込み方法:(1)論文仮題、(2)要約(1500字程度)、(3)希望する投稿の枠(「特集」あるいは「自由投稿」)、(4)住所・電話番号・ファックス番号・メールアドレスを下記の応募先までお送りください。なお、申込みの際には、受領の確認メールを返信いたしますので、万一返信がない場合は再度ご連絡ください。 応募先:上村英明(恵泉女学園大学)yuemura@keisen.ac.jp ならびに藤岡美恵子(法政大学)miekof@hotmail.com 両編集委員宛にお送りください。