川内原発差止訴訟(本訴と仮処分)の意義・目的
「原発なくそう!九州川内訴訟」弁護団
事務局長弁護士白鳥努
第1初めに(川内原発差止訴訟・本訴と仮処分の概要)
1川内原発の稼働差止めを求める本訴について
(1) 当事者
ア原告(現在2479人)
第1次提訴(H24.5.30)時は1114人であったが、第6次提訴(H26.9.16)を終えた現在の原告数は、2479人(九州玄海訴訟の原告数はH26.9.10現在で8516人)。
イ被告(九州電力と国)
過去の原発の運転差止訴訟においては、電力会社のみが被告とされ、国をも被告として訴訟が提起されたことはなかったが、①わが国の原子力政策ひいては原発 の設置・操業には国が深く関与している以上、電力会社だけを相手(被告)に裁判を起こしても、根本的な解決には至らないこと、②わが国から全ての原発を無
くすためには、原子力政策を策定・推進している国自体を訴訟当事者(被告)とする必要があること等から、私たちは、本訴においては、国も被告とした(仮処 分は九電のみ)。
(2) 差止め等を求める民事訴訟(私達の人格権に基づく主張)
原発訴訟には、①行政訴訟(原発の設置許可をした国に対して、右許可の取消を求める取消訴訟など)と、②民事訴訟(住民が人格権・環境権に基づいて原発の建設や運転の差止め等を求める差止訴訟)があるが、私たちの訴訟は②の差止訴訟。
これは、原発事故の被害の甚大性と事態の不可収束性等を前提にして、原発を稼働することそれ自体が、重大事故が発生した場合に私達の人体や生命に対して極 めて甚大な被害を与える可能性の高いことに照らすと、憲法が個人に保障している生命、身体、健康を維持し、快適な生活を営む権利、即ち、人格権(憲法13
条)等を侵害していることは明らかであるという考えに立脚し、憲法で保障された人格権に基づき、川内原発の運転の差止めを求めるという主張を本訴訟で展開 していくということ。
※平成26年5月21日、福井地方裁判所において言い渡された、大飯原発の差止めを認めた判決(以下「大飯判決」という。)の意義(本仮処分申立書からの抜粋)
1大飯判決は、司法の覚悟・矜持が現れた判決であること
大飯判決は、冒頭において、「福島原発事故においては、15万人もの住民が避難生活を余儀なくされ、この避難の過程で少なくとも入院患者等60名がその命 を失っている。家族の離散という状況や劣悪な避難生活の中でこの人数を遥かに超える人が命を縮めたことは想像に難くない。さらに、原子力委員会委員長が福
島第一原発から250キロメートル圏内に居住する住民に避難を勧告する可能性を検討したのであって、チェルノブイリ事故の場合の住民の避難区域も同様の規 模に及んでいる」、「大きな自然災害や戦争以外でこの根源的な権利が極めて広汎に奪われるという事態を招く可能性があるのは原子力発電所の事故のほかは想
定し難い」(傍点は引用者)として、原発事故の被害の大きさやその特殊性について言及し、その上で、「原子力発電技術の危険性の本質及びそのもたらす被害 の大きさは、福島原発事故を通じて十分に明らかになったといえる」とし、「福島原発事故の後において、この判断を避けることは裁判所に課された最も重要な 責務を放棄するに等しいものと考えられる。」と断じている。
このように、大飯判決は福島原発事故の経験を司法がどのように総括するか、特に人権侵害の未然防止という司法に課せられた職責との関係で、司法がどのような判断を行うべきかという視点で貫かれており、司法の覚悟・矜持が現れた判決というべきである。
2差止訴訟の判断基準として、人の生命を基礎とする人格権は経済活動の自由に優越すると説いたこと
大飯判決は、上記のように、福島原発事故を踏まえ、人権侵害の未然防止という司法に求められる基本的な職責を自覚した上で、差止訴訟における判断の在り方について、次のように判示している。
まず、「人の生命を基礎とする」人格権(憲法13条)について、「我が国の法制下においてはこれを超える価値を他に見出すことはできない」と、最も重要な 権利であることを明確に認める一方で、原子力発電所の稼働について、「電気の生産という社会的には重要な機能を営むものではあるが…(略)…法的には電気
を生み出すための一手段たる経済活動の自由に属するものであって、憲法上は人格権の中核部分よりも劣位に置かれるべきものである」と判示して、明確に両利 益の質的な違いを認めた。
3大飯判決の判決理由を全て否定できない限り、本件でも却下の決定を下してはならないこと
大飯判決は、福島原発事故後初めて言い渡された差止訴訟の本案判決であり、福島原発事故という大災害を経験した日本で、政府がブレーキの壊れた車のように 原発の再稼働・原発輸出に突っ走る中で下された極めて重要な判決であり、また、大飯判決は、その結論だけでなく、理由付けの確かさにおいて歴史に残る判決 であり、そこで述べられた事項は原則として他の原発訴訟及び本件仮処分にも妥当する。
大飯判決で述べられた判決理由をすべて否定できない限り、本案訴訟において住民らの請求を棄却することはできない状態になったと言っても過言ではない。大 飯判決は、福島原発事故後の原発裁判の出発点といえる判決であり、本件仮処分においても、大飯判決で述べられた判決理由をすべて否定できない限り、却下の 決定を下してはならない。
2再稼働阻止に向けた仮処分について
(1) 本訴とは別に仮処分を申し立てた理由
原子力規制委員会における川内原発の再稼働に向けた審査が、全国の原発の中でも最優先で進められている旨の報道が日々繰り返されていたことから、本案訴訟とは別に、平成26年5月30日、川内原発の(再)稼働差止めを求める仮処分を申し立てた。
(2) 当事者
ア債権者(23人)
債権者は、鹿児島、熊本、宮崎の原告団の代表的な立場にある方々の23人。
イ被告(九州電力のみ)
本訴と異なり、早期の司法判断を求める必要があることから、債務者は九電のみとした。
第2川内原発の操業停止を求める裁判の意義・目的
1福島原発事故が提起している原発問題を風化させず、逆に高まりつつある原発稼働停止・廃止の動きをさらに高めていくこと
国民の意識から原発問題を早く消し去り、原発再開を進めようとする電力会社、国の動きに抗して、再稼働阻止に向けた裁判を行うことにより、福島原発事故が 提起している原発問題を風化させず、逆に、高まりつつある原発稼働停止・廃止の動きをさらに高めて、これを全九州的、さらには全国民的なものにする(大飯 判決のインパクト、脱原発法の制定運動など)。
※文科省所管の公益財団法人「日本原子力文化振興財団」がまとめた「原子力PA方策の考え方」の抜粋
・繰り返し繰り返し広報が必要である。新聞記事も、読者は三日すれば忘れる。繰り返し書くことによって刷り込み効果が出る
・政府が原子力を支持しているという姿勢を国民に見せることは大事だ。信頼感を国民に植え付けることの支えになる
・原子力による電力が”すでに全電力の三分の一も賄っているのなら、もう仕方がない”とおおかたは思うだろう
・教科書(例えば中学の理科)・・・の記述を注意深く読むと、原子力発電や放射線は危険であり、できることなら存在してもらいたくないといった感じが表れている。これではだめだ。厳しくチェックし、文科省の検定に反映させるべきである。
・停電は困るが、原子力はいやだ、という虫のいいことを言っているのが、大衆であることを忘れないように
・ドラマの中に、抵抗の少ない形で原子力を盛り込んでいく
2大規模訴訟としての意義
多くの人が裁判の原告となることで、原発廃止についての多数人の強い意思を表明して国民の世論を高め、国、自治体、電力会社を原発廃止の方向へ追いこむ戦いができること。
差止訴訟は、やろうと思えば、たった一人の原告でも訴えを起こすことは出来るが、私たちは、極一部の限られた人だけが原発に反対しているのではなく、「こ れだけ多くの人々が原発に反対しているんだ」という「無視できない多数の声」として、九州電力、国、さらには裁判所に対し、原発反対の声を届け、ひいては
世論をも喚起したいと考え、一人でも多くの市民の方々に本訴の原告となって頂きたいと考えている(今後も第7次提訴等を予定)。
3政策形成訴訟としての意義
(1) 「脱原発弁護団全国連絡会」の結成、全国での原発訴訟の提起
そして、大規模訴訟になればなるほど、水俣病訴訟、ハンセン病訴訟、B型肝炎訴訟などと同様のいわゆる政策形成訴訟としての意義も大きくなると考えている。
平成23年7月10日、「脱原発弁護団全国連絡会」が結成され、女川(宮城県・準備中)と東通(青森県)を除く全ての原発において、運転差止め等の原発訴訟が提起されている。
(2) 裁判長クラスの判事らによる「複雑困難訴訟」に関する協議
次の資料は、平成24年1月26日、27日に、「地方裁判所で民事又は行政訴訟事件を担当している裁判長クラスの判事」35名(募集人員30名)が集まっ て開催された「平成23年度特別研究会(第7回、複雑困難訴訟)」において、「複雑困難訴訟事件の適正な事件処理に資するため、実体法及び訴訟運営の観点
から、研究、討議を行う」という目的の下に協議された問題であるが、第1問関係において、原発関連訴訟についての協議がなされている(ちなみに、第2問関 係は諫早湾開門請求訴訟についてである。)。
※司法研修所にて平成24年1月26日、27日に開催された「平成23年度特別研究会(第7回、複雑困難訴訟)」において協議された問題
第1問原子炉規制法に基づく原子炉設置許可の取消訴訟等又は原子力発電所の設置・運営の差止請求訴訟(以下「原発関連訴訟」という。)にかかわる問題
1福島第一原発事故を踏まえて、裁判所は、原発関連訴訟に対し、どのようなスタンスで審理・判断に臨むべきか
2福島第一原発事故及びその後の状況は、原発関連訴訟の今後の事件動向にどのような影響を与えるか
3国の原子力行政の帰趨は、原発関連訴訟の審理運営に対してどのような影響を与えるか
4判断に必要な専門的知見を適切に訴訟過程に反映させるために裁判所が留意すべき事項にはどのようなことがあるか
第2問公の事業又は営造物についての運営の継続又は停止をめぐって複数の訴訟が行われているもの(諫早湾開門請求訴訟等)にかかわる問題
1同一の社会的事象・原因に関して複数の裁判所に異なる訴訟が提起された場合において裁判所間の判断に矛盾・抵触が生じたときに、それを批判する国民の声を裁判所はどのように受け止めるか
2判断の矛盾・抵触を回避するために採り得る審理運営上の工夫等にはどのようなものがあるか
3公共事業等を争う上でふさわしい訴訟形式(民事訴訟と行政訴訟の役割分担の在り方など)
第3問潜在的な被害者が多数存在するために一定の審理運営上の配慮が必要となると考えられる訴訟にかかわる問題
1和解の在り方
2同種事件が複数の裁判所に係属する場合における裁判所間の連携の在り方等
第4問複雑困難訴訟全般にかかわる問題
1良質な専門的知見を訴訟過程に反映させるための方策等
2社会的に波及効の大きい事案につき、必要な法的観点、社会経済的事実(社会的知見)を訴訟過程に反映させるための方策等
3大規模訴訟の効率的な訴訟運営の在り方等
4訴訟によって九電等から必要な資料・データや回答を引き出す等して、原発停止・廃止以外にないことを広く訴えること
さらに、裁判によって、川内原発の安全性と操業の是非をめぐって、国や九電との本格的、全面的な論争が可能になり、また、九電等から必要な資料・データや 回答を引き出す等して、川内原発(ひいては原発一般)に関する問題点をより明らかにして、原発停止・廃止以外にはないことを広く訴える。
※ボーリングコア差し替え事件(1975年)
地質調査の際、岩盤に穴を開け(ボーリング)、地質のサンプル(コア)を採取するが、川内原発の予定地では、採取したサンプルがぼろぼろでとても評価に耐えられないとして、比較的しっかりしたコアと差し替えられた事件。
この事件は、国会で作業員が証言したことから、全国に知られることになったが、最終的に原子炉安全専門審査会が出した結論は、「ボーリング試料の捏造、差 し替えは六、七本について行われた疑いがあるが、うち炉心部に関わる二本については、追加ボーリングによって地盤に支障のないことが分かった」というもの であった。
第3私たちが川内原発差止訴訟(本訴と仮処分)で問題としている主な問題点
1原発事故の被害の甚大性
「大きな自然災害や戦争以外でこの根源的な権利が極めて広汎に奪われるという事態を招く可能性があるのは原子力発電所の事故のほかは想定し難い」(大飯判決)。
2新規制基準は原発再稼働の安全を担保していないこと
(1) 新規制基準は再稼働の「ためにする基準」であること
(2) 電力会社の裁量を広く認めた新規制基準は安全の為の実質的な基準としての機能を全く果たしていないこと
(3) 新規制基準は安全性を軽視した単一故障の想定を維持していること
(4) 新規制基準は大規模損壊の場合の対応が極めて不十分であること
(5) 5年間の猶予期間は原発の早期再稼働に向けて基準のハードルを引き下げたものであること(安全性の軽視)
(6) 原発再稼働の障害となる立地審査指針の規定を設けていないこと
(7) 新規制基準では、地域住民の避難等に関する緊急時計画について、原発の設置許可(変更)申請の審査において、原子力規制委員会がこれを審査する仕組みとなっていないこと(原発の設置・運転と緊急時計画の策定の連携が取られていないこと)
(8) 「安全だとは申し上げません」、「これで人知を尽くしたとは言い切れない」という田中俊一委員長の発言
原子力規制委員会の田中俊一委員長は、川内原発の審査書案を了承した本年7月16日の記者会見において、「基準の適合性を審査した。安全だとは申し上げま せん。」と発言し、また、「これで人知を尽くしたとは言い切れない」という発言をしており、新規制基準に適合してもなお原発事故のリスクが残ることを明確 に認めた。
3川内原発の耐震安全性は全く保証されていないこと
(1) 耐震安全性指針の不備
(2) 「震源を特定せず策定する地震動」の基準の不備について
ア僅か17年間の観測記録だけで過去1000年、1万年、10万年間の「震源を特定せず策定する地震動」の参考となる地震動の最大値を知ることは不可能であること
イ全国共通でMw6.5未満の地震が考慮されるべきこと
ウ「震源を特定せず策定する地震動」は留萌支庁南部地震を前提とすれば1656ガルに達する可能性があり、川内原発が前提としている620ガルという基準地震動は、十分に推測され得る地震動を極めて過小評価したものに過ぎないこと
4火山(火砕流)の危険性を解消できない以上再稼働は許されないこと
(1) 原子力発電所の火山影響評価ガイド等の定め
実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則の6条1項は、「安全施設は、想定される自然現象(地震及び津波を除く。次項に おいて同じ。)が発生した場合においても安全機能を損なわないものでなければならない。」と定め、また、規制委員会が作成した原子力発電所の火山影響評価
ガイドは、「原子力発電所の運用期間中に火山活動が想定され、それによる設計対応不可能な火山事象が原子力発電所に影響を及ぼす可能性が小さいと評価でき ない場合には、原子力発電所の立地は不適になる」と定めている。
(2) 噴火の予知が可能なのは噴火の比較的直前であり、数カ月や数年前といった非常に早い時期から噴火の発生を予測できるわけではないこと
九州電力は、破局噴火も予知が可能であり、破局噴火の兆候が現れたときに対応をすればよいと主張している。
しかし、火山噴火予知連絡会長である藤井敏嗣東京大学名誉教授は、「噴火の予知が可能なのは噴火の比較的直前であり、数カ月や数年前といった非常に早い時 期から噴火の発生を予測できるわけではない。」(岩波書店・科学2014年1月号・54頁)と指摘され、また、「我々は巨大噴火を観測したことがない。ど
のくらいの前兆現象が起きるかは誰も知らない」(平成26年5月8日付南日本新聞)という指摘や、「原発の運用期間である最大60年の間に噴火があるかど うかは判断できません。川内原発の運転期間中に噴火するかしないかで立地を判断するなら“分からないから、立地は認められない”ということになるのではな いでしょうか」という指摘がなされている。
(3) 川内原発は最長60年の原発稼働期間中に巨大噴火が発生し、火砕流の被害を受けるリスクがあることから、「立地不適」であること
川内原発は、阿蘇カルデラ(中央火口丘群)、加久藤カルデラ(霧島火山)、姶良カルデラ(桜島火山)、阿多カルデラ(開聞岳)、鬼界カルデラ(薩摩硫黄 岳)という活動的なカルデラ火山を多く抱える南九州に存在していることから、毎日新聞が全国の火山学者に行ったアンケートにおいて、50名の学者のうち
29名が、川内原発は最長60年の原発稼働期間中に巨大噴火が発生し、火砕流の被害を受けるリスクがあると回答し(平成25年12月23日付毎日新聞)、 また、西日本新聞が全国の火山学者に行ったアンケートでも、29名の学者のうち18名が、川内原発は最長60年の原発稼働期間とその後の使用済み核燃料保
管期間中に巨大噴火が発生し、火砕流などの被害を受けるリスクがあるという同様の回答をしていること(平成26年4月21日付西日本新聞)は至極当然のこ とである。また、わが国の火山噴火予知研究の第一人者である東京大学噴火予知研究センターの中田節也教授は、原子力規制委員会の検討会に招かれて講演をさ
れた際に、「超巨大噴火は日本ではおよそ1万年に1回の割合で発生している。現在は確率的には、いつ起きても不思議ではない時期」であり、「活断層の基準 では12万〜13万年に1度動いても考慮の対象としている。日本中に影響を与える超巨大噴火は1万年に1回の確率だから、活断層と比べても頻度は高い」と
いう指摘や、さらに、川内原発については、「川内原発には無理のない想定で火砕流が届きます。なぜ届かないといえるのか、つめて学問的にいえるようになら ないと、許可しない方がいいと私は思います。」(岩波書店・科学2014年1月号・52頁)、川内原発は「本来あの場所には建てないほうがよかった。」、
「少しでも不安材料があれば運転を止め、対策をとれる体制が確保できるまでは審査を通すべきではないだろう。」という非常に重大な指摘をされている (2014年5月8日付朝日新聞)。
このような火山学者の指摘を真摯に受け止めるならば、川内原発は、火山影響評価ガイドがいう、「原子力発電所の運用期間中に火山活動が想定され、それによ る設計対応不可能な火山事象が原子力発電所に影響を及ぼす可能性が小さいと評価できない場合」に当たることは明らかであり、規制委員会が自ら作成した上記 1の基準を適正に適用すれば、川内原発は「立地不適」となるのが当然である。
(4) 田中俊一委員長自身が、「カルデラの巨大噴火について、科学的知見が不足している状況での判断であったことを明かした」こと
この火山・火砕流の問題点についても、原子力規制委員会の田中俊一委員長自身は、川内原発の審査書案を了承した本年7月16日の記者会見において、カルデラの巨大噴火について、科学的知見が不足している状況での判断であったことを認めた。
5住民が納得する避難計画が出来ていない状態において、川内原発が再稼働することは許されないこと(保全の必要性)
(1) 原発事故の影響を受ける住民全員の早期避難の保証なしに原発の再稼働は許されないこと
(2) 川内原発半径30キロメートル圏内の避難計画の実効性に対する重大な疑問
ア自家用車利用困難者避難の輸送手段の不足
イ川内原発半径30キロメートル圏内からの避難の問題点
ウ災害弱者の避難については計画策定の目途さえたっていないこと
(3) 住民全員の早期避難の目途が全くたっていない状況下での原発再稼働は人命軽視であり、周辺住民の生命・身体の安全を無視した原子力規制委員会の姿勢は断じて許されないこと
6原発事故の影響を受ける被害自治体全ての同意なしに原発の再稼働は許されないこと
(1) 原子力災害対策重点区域が原発の半径8〜10キロから同30キロ圏に拡大されたこと
(2) 少なくとも30キロ圏の被害自治体の同意が必要であること
(3) 実に84.9%の人々が、再稼働についての同意は薩摩川内市と鹿児島県だけでよいとした伊藤祐一郎鹿児島県知事の判断に反対の意思を表明していること
以上