⑮平和と芸術 : 2006年度春季研究大会

司会:奥本京子(大阪女学院大学)

報告:ロニー・アレキサンダー(神戸大学)「ポーポキ・ピース・プロジェクトについて:DVD『ポーポキのピース・メッセージ』を使ってのワークショップ」


 飼い猫だったポーポキとご自身を主人公に、アレキサンダー氏は、昨年、絵本を描き、それが「岩波DVDブックPeace Archives 平和ミュージアム」(立命館大学国際平和ミュージアム監修、岩波書店、2005年)のDVDに収録され、12月より発売されている。現在は、そのDVDを使ってワークショップなどをしながら原作の出版のための活動をよびかけている。「ポーポキ・ピース・プロジェクト」と題された一連の活動は、ネコのポーポキ(ハワイ語でねこのこと)と一緒に平和の根源的な意味を問い、平和について考え、平和づくりのために自分に何ができるかを考えるためのもので、今回の分科会では短い時間の中でDVD「ポーポキのピース・メッセージ」(10分)を観賞し、ワークショップの一部を体験することとなった。五感を使って「平和」を表現し、それをポーポキに紹介するという仕掛けがほどこされており、「あなたにとって平和にはどれがもっとも重要?」という問いに対して、「多様性、自然、自由、安全、富、武器、想像性、いのち、社会正義、芸術、教育、信頼、コミュニケーション、愛」というリストから2つの言葉を皆で選び(自由と愛を選択)、ワークを行った。さらに、クレヨン、色鉛筆などをつかって、それぞれに表現するセッションも少し試みた。

 その後、参加者のみなさんと芸術の役割などについて議論した。アレキサンダー氏にとっては、アート・芸術とはもう1つの表現方法であり、気付かないものに気付かせてくれるものだという。アート・芸術とは何か、それはどのように平和構築・創造に結びついていくのかは、当分科会の大きなテーマであるが、みんなの感性をとおして一緒に創りあげていくもの、反応するもの、受け入れていくもの、などと様々なコメントが出た。対話は可能かという問題に関しては、どうすれば「通じる」のだろうかという問いに対し、共感、受け入れる準備、接触仮説・環境づくりなどに渡る意見が交わされた。対話の回路としての芸術の役割というものはあるだろうし、当分科会としても模索していきたい問題である。平和構築のためのコミュニケーションの前提を考えるにあたって、芸術がチャンネル(回路の可能性)を広げることになるのではないだろうか。

 『ピースメッセージ』が収録されている岩波DVDブックPeace Archives『平和ミュージアム』は「平和と芸術」分科会の名義で購入した。また、当分科会ではMLを使って、普段から芸術についての対話を重ねていきたいと考えている。関心をお持ちの方は、責任者までお問い合わせください。(奥本京子)