【連絡先】
共同責任者:桐谷多恵子、楊小平
Email: kiriyataeko(a)gmail.com(桐谷)
Email: yangxiaopingjp(a)yahoo.co.jp(楊)
* 報告申込みは随時受け付けます。分科会の報告者は、概ね3か月前には確定しています。分科会「グローバルヒバクシャ」あるいはグローバルヒバクシャ研究会に一度参加されて申し込まれることをお勧めします。
広島・長崎への原爆投下から60年経ても、核兵器は廃絶されていない。広島・長崎の原爆被害は、研究の蓄積はあるが、原爆症認定集団訴訟が提起したように、未だ解明されていない問題や、従来等閑視されてきた問題が存在する。体験者が高齢化するなか、証言の聞き取りや、体験の継承や思想化もまさに急務と言える。
さらに核被害はもはやヒロシマやナガサキに固有の問題ではない。核兵器の実戦使用に至らなくとも、核兵器や原子力の開発(以下、核開発)自体は推進され、放射線被曝者が新たに生み出され、甚大な環境汚染が地球規模で引き起こされてきた。核被害は地球規模の広がりをみせているのである。しかしグローバルヒバクの実態は隠蔽される傾向があり不可視化され続けている。グローバルヒバクシャからは、被害の認知と補償要求がなされている。
このような現状をふまえ、広島・長崎の原爆被害の実相を含む、世界に広がる様々な核被害実態を解明すると共に、普遍化、理論化、思想化を進めていくのが、本分科会の目的である。
日本平和学会では、核兵器そのものの問題はしばしばとりあげられてきた。しかし核保有国家の動向や、兵器技術の問題が中心であり、被害者あるいは、被害地の問題は真正面からあまり取り上げられてこなかったように思われる。日本平和学会設立趣意書には、「被爆体験に根ざした戦争被害者としての立場からの普遍的な平和研究を制度化しようと考えている」との一節がある。私たちは、国家の視点に留まることなく、直接的/構造的暴力の下にある地域やそこに暮らす人びとをも分析視角に入れた、核兵器をめぐる総合的な研究が、日本平和学会においてこそ可能であり必要だと考える。
これらを実行に移すべく、グローバルヒバクシャに関して定期的に研究成果を公表し、学際的な意見交換を行い、知見・情報を蓄積する場として、グローバルヒバクシャ研究会を母体に日本平和学会に分科会「グローバルヒバクシャ」を創設した。
グローバルヒバクシャとは、広島・長崎の原爆被害と共に、核開発が推進されてきた結果、被害者が世界で生み出され、甚大な環境汚染が地球規模で引き起こされてきた現実を明確に可視化すべく、作り上げた新たな概念装置である。グローバルヒバクシャは、各地の差異に留意しながらも、地域の特殊問題としてのみとらえるのではなく、広島・長崎を含め様々な核被害の問題を横断的にとらえ、核被害者を結びつけていきたいという問題意識を投影した言葉でもある。
[分科会設立までの経過]
・準備会
2004年2月21日「ビキニ水爆被災50周年研究集会」(日本平和学会関東地区研究会ほか3団体共催、於:日本青年館)に集った人のなかで土台を築く。
・公開研究会(2004年6月、札幌にて)
日本平和学会の開催に併せて、前日に札幌で、分科会グローバルヒバクシャの母体となるグローバルヒバクシャ研究会の設立研究会を開催する。
報告:川野徳幸(広島大・原爆放射線医科学研究所附属国際放射線情報センター)「被曝証言から見るセミパラチンスクの核被害」
報告:高橋博子(広島市立大・広島平和研究所)「第五福竜丸事件に対する米政府の対応」
・公開研究会(2004年8月、広島にて)
8月6日の前日に、広島で、分科会グローバルヒバクシャの母体となるグローバルヒバクシャ研究会の公開研究会を開催する。
報告:竹峰誠一郎(早稲田大・院生)「ビキニ水爆被災50周年 核実験場とされたマーシャル諸島の現在」
特別ゲスト:メーナルド・アルフレッド(マーシャル諸島アイルック環礁選出国会議員)
研究目標
本分科会の特徴は、若手が主体となり、世代や文系・理系の分野を超え、さらにはジャーナリストや実践家などにもネットワークを広げ活動している点である。今後もその方向性で分科会を運営していきたいと考えている。
具体的には、学術研究の動向だけでなく、実践(運動)や教育の動向も重視しながら分科会の運営を図っていく。そこから平和学のオリジナリティーを築いていきたい。また大学院生など若手の研究を意識的に取り上げ、様々な場で経験を積んだ方と出会い、対話する場にしていきたいと考えている。
参考文献
分科会グローバルヒバクシャの母体であるグローバルヒバクシャ研究会の研究成果として、下記の本を出版しています。
グローバルヒバクシャ研究会編著『隠されたヒバクシャ――検証=裁きなきビキニ水爆被災』凱風社、2005
* 関連する「文献案内」(384-392頁)を約50冊所収
グローバルヒバクシャ研究会編『いまに問う ヒバクシャと戦後補償』凱風社、2006