テーマ:「フランス核実験問題」
司会:竹峰誠一郎(早稲田大・院生)
報告:真下俊樹(緑の政策研究家、神戸市外大・国学院大・非常勤)「フランス核実験被 害者の権利回復運動」
討論:尾立要子(東京外国語大アジアアフリカ言語文化研究所・共同研究員)
フランスの核実験問題をテーマに分科会を開催した。グローバルヒバクシャ分科会が、仏の核実験問題をとりあげたのは初めてのことであった。仏核実験被害者団体とのネットワークをもち、仏語にも堪能な真下俊樹氏が、報告をおこなった。仏核実験被害者の問題を包括的に理解し、かつダイナミックな最近の動きを知る貴重な機会となった。続いて仏海外領土政策に詳しい尾立要子氏から、植民地主義に引きつけた討論が展開された。以下、真下報告の要訳である。
仏は1960~96年に計210回の核実験を行った(サハラ砂漠で大気圏4回、地下13回/仏領ポリネシアで大気圏46回、地下147回)。実験に動員された仏本国の軍人・科学者・技術者は計約7万7千人 にのぼると言われ、 他に多数の労働者が現地採用された。仏政府はこれまで核実験の人体・環境への影響を一切否定しており、核実験関連の情報は、「国防機密」としてほとんど公表されてこなかった。
しかし、1990年代半ばごろから市民団体による被害者の掘り起こし運動が始まり、被害者団体として、2001年に仏本国で「核実験退役軍人協会(AVEN)」、仏領ポリネシアで「モルロア・エ・タトゥ協会(MeT)」が、2003年に アルジェリアで「アルジェリア・サハラ砂漠仏核実験被害者協会(AAVENF)」が設立された。
仏本国では、AVENを中心に、現在の罹患している疾患が核実験の放射線被曝に起因するとして補償(恩給給付)を求める訴訟が300件以上係争中である。すでに地方裁判所レベルで数十件の勝訴判決が出ているほか、8件で勝訴が確定している(2008年5 月現在)。
仏領ポリネシアでは、ポリネシア議会による調査で放射性降下物が居住地域にもった事実が明らかなった。不安定な政権の下ながら、仏政府との交渉により元実験場の除染工事、元労働者と住民の医学調査が始まり、2008年5月には、初の補償請求訴訟が提訴された。
アルジェリアでは、2007年2月にアルジェリア政府主催で「国際核実験被害会議」が開かれ、仏政府に対する調査・除染・被害者補償の要求が可決された。2007年12 月、サルコジ仏大統領は、サハラ砂漠で核実験環境影響調査を行う用意がある旨を発表した。AVEN、MeT、アルジェリア政府の三者は、共同して仏政府との交渉を進めている。