⑭グローバルヒバクシャ : 2006年度春季研究大会

司会:高橋博子(広島市立大・広島平和研究所)

報告:栗原岳史(東京工業大・院生)「冷戦初期の米国における原子爆弾の管理をめぐる 論争:AFSWPの活動を通じて」

討論:市川定夫(埼玉大・名誉教授)


 グローバルヒバクシャ分科会では、科学史を専攻している東京工業大学・院生の栗原岳史氏に「冷戦初期の米国における原子爆弾の管理をめぐる論争:AFSWPの活動を通じて」と題した報告をしていただいた。

 第二次世界大戦中に原爆を開発したマンハッタン工兵管区は、戦争終結後の1946年に文民機関である原子力委員会(現エネルギー省)に引き継がれるが、軍部側も1947年にマンハッタン管区の責任者であったレスリー・グローブズをチーフとしてArmed Forces Special Weapon ProjectAFSWP)を発足させていた。

 本報告は、AFSWPをつうじて、米国の原子力管理をめぐる文民と軍部との対立を分析するもので、従来存在がほとんど知られてこなかったAFSWPに注目した点が、新しく評価できよう。栗原報告では、科学技術の知識を利用しようとする政治の役割が強調された。

 討論者の市川定夫・埼玉大学名誉教授(遺伝学)からは、米エネルギー省のブルックヘブン国立研究所の研究員時代(1965年から1965年まで)の貴重な証言がなされた。核開発体制の隠された側面を明らかにする試みとして、本分科会は大変意義深かった。(高橋博子)