⑨ジェンダーと平和 : 2007年度春季研究大会

司会:森玲子(広島大学)
報告:佐竹眞明(名古屋学院大学)「国際移住・結婚とジェンダー:フィリピン・日本」
討論:羽後静子(中部大学)

 フィリピン女性の日本への移住について、労働(主として興行労働)と結婚の2点から報告があった。
 1980年代以降、フィリピンからの「興行資格」による来日者数は最多時で8万人を越え、全体に占める割合も6割となる年もあった。その95%以上が女性である。フィリピン政府による労働者の海外派遣政策や日本との所得格差等フィリピン側の押し出し要因と共に、日本の水商売での人手不足等が、継続的な移住労働を生み出してきた。しかしそこで働く女性たちの人権侵害が問題として指摘され、日本政府は入国制限にふみきった。その結果、興行労働者数は減少したが、かえって偽装結婚等による入国者数増等新たな問題を生み出した。
 その一方で、日本におけるフィリピン女性と日本男性との国際結婚数は増加傾向にある。特に1990年代後半には、前述の興行労働での来日女性と日本男性との「日比結婚」はピークを迎えた。国際結婚の経済社会的分析によると、南北問題的人の流れが見られる。日比結婚も例外ではない。日本男性側の結婚難等の事情も影響していると思われるが、離婚による問題も発生してきており、きめ細かい支援の必要性がいわれる。
 今後、コミュニテイにおける異文化理解をどのように進めるかは、日本社会にとっても大きな課題である。さらに多文化共生社会の実現を目指す観点から、フィリピン女性・家族のネットワーク作り等を積極的に進めていくことの重要性が指摘された。