⑨ジェンダーと平和 : 2006年度春季研究大会

司会:森玲子(広島大学)

報告:溝上芳恵(上智大学大学院)「国際協力NGOの多様性に関する考察-組織文化の観点から」

討論:佐竹眞明(名古屋学院大学)


 世界各地で起きる災害等への民間による支援活動が活発化し、それらが報道で取り上げられ、社会的認識が高まる中、国際協力NGOを対象にする研究も増加している。報告者は、組織文化の観点から、国際協力NGOの分析を試みている。

 まず、国際協力NGOの定義を簡単に示した上で、チャールズ・ハンディの組織文化の四類型を紹介した(「クラブ文化(蜘蛛の巣状文化)」「役割文化(ピラミッド状文化)」「仕事文化(網状文化)」「個人文化(星の集合イメージ文化)」)。報告者は、組織機能をプロジェクトの進行過程の分析に連動させることで、組織内や組織間の文化の相違や衝突を、より的確に評価することが可能になると考える。

 組織の実情を把握するため、報告者はインターンとして、一NGOにおいて参与観察を行っている。そこでの半年以上に及ぶ観察の報告が今回の中心であった。

 討論者から、いくつかの指摘があった。まず、報告者の所属しているNGOの資金源が公的資金に頼っているという事実からNGOの定義について疑問がだされた。さらに内部からの観察期間が長引くことで、少人数の組織において、報告者自身が組織文化を作り出す担い手となっているのではないかとの指摘もあった。またNGOのミッションからして、組織文化で考慮対象となる、効率化への考え方にも疑問がだされた。

 また、参加者から、先進国のNGOとそれ以外のNGOの組織的違い、Operational NGOAdvocacy NGOのように、ミッションの違いが組織文化に及ぼす影響なども考慮すべきとの意見もあった。別の参加者からは、事務局と現場スタッフの組織文化とのかかわりの違いなども指摘があった。報告者の今後の研究の発展に期待したい。