テーマ:「ローカルとグローバルな視角からのサブシステンス論にむけて」
司会:戸崎 純(東京都立短大)
報告:渡邉智明(九州大学)「越境的環境リスクと国際制度:バーゼル条約の展開過程を中心に」
報告:李昤京(立教大学大学院)「『済州4・3』関連披虐殺者遺族の経験に関する考察」
討論:郭洋春(立教大学)
環境・平和分科会では、「ローカルとグローバルな視角からのサブシステンス論にむけて」のテーマのもと、渡邉智明会員(九州大)「越境的環境リスクと国際制度:バーゼル条約の展開過程を中心に」と李昤京会員(立教大)「『済州4・3』関連披虐殺者遺族の経験に関する考察」の二つの報告と郭洋春会員(立教大)の討論があった。
渡邉報告は、有害廃棄物やリサイクル資源の国際的取引が生み出す越境的環境リスクに対応する国際制度の有効性についての考察であった。先行研究の要点と問題点、廃棄物の「輸出国」であるEUと米国のスタンス、途上国への「不法投棄」禁止が国際政治の課題となった80年代とアジア諸国を中心とした資源リサイクルの拡大が見られる90年代の廃棄物「輸入国」のスタンスを簡潔に分析し、「修正」バーゼル条約未発効の背景を示した上で、国際的な資源リサイクルが途上国インフォーマル・セクターに環境破壊・健康被害を生み出す「公害輸出」を阻止し、政治決定者と決定の影響を受ける者の「非対称的」な関係に対して、「非国家アクターの可能性を広げる場としての国際制度」構築の必要性が指摘された。渡邉報告に対して郭会員から、有害廃棄物の移動禁止と資源リサイクルの関連、国際的合意形成の課題、資源リサイクルと市場原理との関係などについての質問があった。
李報告は、「済州島4・3」と朝鮮戦争の際に「アカ」として親兄弟が虐殺され、サブシステンスを破壊され、離散した在日の家族の調査から、冷戦体制形成期の国家暴力の国内構造・国際構造を明らかにしようとする考察であった。統一民族国家(朝鮮人民共和国)を支持した済州島の民衆を「アカ」=非国民として排除の対象とし、朝鮮半島の南半分を「国民国家」とする「差別的国民統合」(排除と統合)と、「米国の東アジア反共・冷戦戦略下、反共共同体としての日本(植民地支配・戦争責任の免責)と韓国(軍事独裁政権の維持)の共謀関係」が指摘された。李報告に対して郭会員から、この調査研究の目的・課題、真相究明の意義、「グローバルな視点」とは何かなどについての質問があった。(戸崎純)