司会:山田修(新幹社)
報告:田坂興亜(アジア学院理事長)「水俣50年・チェルノブイリ20年、そしてサブシステンスの危機をどう乗りこえるか」
討論:七澤潔(NHK放送文化研究所)
10日正午過ぎから始められた分科会は、参加者およそ30人ほど。田坂会員(アジア学院前校長・理事長)の報告に先だってこの部会の成り立ちについて、責任者である蓮井会員(茨城大学)からの挨拶があり、引き続いてOHP、スライドなどを多用した報告に入った。
水俣は周知のように、日本の「経済成長」と表裏をなす、社会の構造的歪みが如実に現れた現象であった。これを認定50年を迎えた現在、どのようにとらえかえし、血肉化していくのか。アジアにおける農薬の大量使用問題とも関連づけて論は展開し、問われているのは、「多消費社会」を生きるわれわれ自身であることが、この田坂会員の報告によって鋭く指摘された。
田坂会員の報告を受けて、チェルノブイリ原発事故を追いつづけて欧州各地を取材した七澤潔氏(NHK放送文化研究所主任研究員)によって、当該原発事故の広がりと、その被害の浮かび上がるさまが、きわめて切実なる様相をもって議論された。いうまでもないことだが、原発など、高度集積技術による環境被害は国境や世代などといった「区切り」をいとも簡単に飛び越えて行く。そして根底に横たわるのは、さまざまな文化的障壁でもあり、伝統的にトナカイの肉を摂ってきた人々に、汚染されたからと一夜にして食生活の変更を迫ることは至難のわざでさえある。こうした課題をひとつひとつどのようにのりこえるのか。会場からの応答では「京都議定書」さえも悪用し、原発を推進しようとする現実の政策にどのように立ち向かうかなどの活発な議論が繰り広げられた。(蓮井誠一郎)