⑦環境・平和 : 2004年度春季研究大会

司会:平井朗(フェリス女学院大学)

報告:花崎皋平(さっぽろ自由学校「遊」共同代表)「ピープルネスとサブシステンス」

討論:横山正樹(フェリス女学院大学)


 本分科会は、北海道での開催ということもあり、札幌を中心に各種の住民運動、アイヌ民族の復権運動などの活動にたずさわってこられた花崎氏に、主要テーマのサブシステンスを、異なった視点から見る報告をお願いした。 

 まず花崎氏から「サブシステンスとピープルネスにスピリチュアリティを加えた三位一体で考え」、安里清信、貝澤正、前田俊彦ら生活の場で闘い続けた人びとの生きた言葉をベースにした報告がなされた。 

 サブシステンスに関し、安里のいう「生活の根っこ」はsubsisto(=根をはる)に通じ、その生存基盤は海と大地の共同の力に依拠している。一方で貝澤が、アイヌは同化によって米作農業を知り貧乏を繰り返したとするのは、安里を継承した平良良昭らの「イモハダシへの逆転」の思想につながる。前田の「客」の思想は、人は自然の客であり、治める思想は開発思想と非なるものであるとする。また同じ前田の「いりあい」の思想がサブシステンスを支えるコモンズの思想へとつながることを、花崎氏は北海道入会地官有地編入の歴史アイヌ民族共有財産裁判の事例から指摘した。さらに「ピープル」と「スピリチュアリティ」とを一体に考え「地域、環境と心身を一つに結ぶことによって生み出される意識と文化が、ピープルとしての生き方の核芯をなす」人間の品性を高める方向性が強調された。 

 横山会員からは、①花崎報告は「近代を内破する近代的(社会科学的)企て」でないもう一つのサブシステンス論ではないか、②現実の「豊かさ」の中にいる私たちと、品性を高める本当の豊かさを結ぶ回路はどこに見いだせるか、等の論点が指摘された。 

 フロアからも活発な質疑がなされ、幅広い分野の研究者、また運動、実践に関わる人びとの間でのサブシステンス志向の重要性が確認された。(平井朗)