「憲法と平和」
責任者:君島東彦
E-Mail: kimijima(a)ir.ritsumei.ac.jp
テーマ概要
戦後日本が9条という憲法規範を持ったことは、戦後日本の平和研究・平和教育・平和運動に決定的な影響を与えたといえよう。憲法9条があるゆえに、戦後日本においては、平和問題は憲法問題となったし、平和運動も憲法訴訟や護憲運動のかたちをとることが少なくなかった。1946年3月7日の朝日新聞は、前日3月6日に幣原内閣が発表した「憲法改正草案要綱」を掲載して、「画期的な平和憲法」という題名の社説を掲げた。これが「平和憲法」という日本語の初出である。日本国憲法の平和主義をめぐるダイナミックスは戦後日本の平和研究・平和教育・平和運動の重要なテーマであり続けている。
しかし同時に、イギリス革命、アメリカ革命、フランス革命を通じて近代憲法が生まれた当初から、軍の規制、武力行使の規制は憲法の重要なテーマであり、憲法が軍と武力行使をコントロールする規定──広い意味での「平和条項」──を持っているのはふつうである。フランス革命における最初の成文憲法、1791年憲法第6篇は「フランス国民は征服を行なうことを目的とするいかなる戦争を企てることをも放棄し、かついかなる人民の自由に対してもその武力を決して行使しない」と規定している。この規定を嚆矢として、世界の諸憲法は多様な平和条項を持っている。これら世界の諸憲法の平和条項の理論と動態に関する研究も平和研究の重要なテーマとなる。
憲法と平和についてさらに考察を進めると、軍と武力行使の規制という「消極的平和」の問題のみならず、憲法による人権保障──平和的生存権、自由権、社会権、参政権、ジェンダー正義等の保障──は「積極的平和」の実現の問題ということができ、これらの問題も視野の中に入ってくる。
したがって、「日本と世界の憲法平和条項の歴史、思想、理論、解釈、動態、政策」、さらに「憲法による人権保障の問題」がこの分科会の関心事となるだろう。関心をお持ちのみなさん──平和研究、平和教育、平和運動にかかわっておられるみなさん──のご参加を待望している。
2008年以降の活動は以下の通りです。